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私のやんごとなき王子様 風名編

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「今日の劇、俺は最高に楽しかった……小日向は?」
「私も――最高に楽しかった」
「最後は勝手に変えちゃったけどな」
「ふふ、でも皆すごく感動したって言ってくれてたじゃない」
「あの時さ……本当は凄く迷った。勝手に台詞変えたりして、もし全部台無しになったらどうしようって――」

 不安そうな顔の風名君に私は戸惑った。そうだ、どうしてアドリブなんかにしたんだろう。

「俺、本番前にすっごい緊張してただろ?」
「うん」

 早鐘を打つような風名君の心臓の感覚が、まだ手のひらに残ってる。

「実は最後のアドリブの事考えてたから緊張してたんだ」
「えっ、そうだったの?」
「そ……やっぱりいくら劇でも桜を選ぶなんて出来なかったから―――」
「どういう事?」

 首を傾げる私に、風名君は私と正面から向き合うと、目の前で片膝を着いて屈んだ。

「えっ? 風名君!?」
「オディール姫、いや、美羽姫。僕はあなたを選んだのです……どうか、弱い僕を、あなたのその美しい心で支えて下さい」
「……か、風名君?」

 一体何が起こってるの?

 私はゆっくりと立ち上がって私の手を取った風名君をただ見つめるしか出来なかった。
 何も言えない私に風名君が小さく笑う。

「好きだよ、小日向……ずっとずっと、好きだった」

 ―――嘘……そんな、まさか―――

「演劇祭で一緒に舞台に立ちたいってお願いした時、今日と同じ位緊張してた。もし断られたらどうしようって……でも、選んでくれただろ? あの時はマジで嬉しかった。買い物にも付き合ってくれて、幸せだな。なんて思ってたんだぜ。単純だろ? ――オデット役じゃなかったのはちょっと残念だったけど、こうやって小日向とたくさん話せて、改めてやっぱりすごい好きだって再確認出来たし―――」

 私は混乱していた。だって、まさか風名君が私の事を好き……だなんて。
 こんな何もかも普通の私なんかを、どうして? どういう事?
 全身が震えていた。

 そんな私の様子に気付いたのか、風名君が優しく微笑んでくれる。