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私のやんごとなき王子様 風名編

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「ほら小日向、上見て」
 立ち止まった風名君に言われて、私はゆっくりと顔を天井へ向けた。
「う、わ……」

 見上げたそこには高い天井があり、天井にはまるで誰かが作ったかのように整った形の円形の穴があいていた。その穴のさらに上には星が無数に瞬いていて、トラッドブルーの空を華やかに飾っていた。

「綺麗……」
「ああ、綺麗だな……昼間もすっごいいいんだぜ?」
「うん、そうだろうね―――風名君。ありがとう……」

 こんな私をいつも励ましてくれて、ありがとう。あなたを好きになって良かった――
 無性に泣きたくなった私は、震えそうになるのを必死でこらえながら星を見上げ続けた。

「なあ、小日向……」

 風名君がぽつりと言う。

「どうしたの? あっ、重たいっ?」
「ははっ、違うよ。そうじゃなくって……あのさ、ちょっとだけ、俺の話し聞いてくれないか?」
「うん」

 いつもより少し真剣な声になった風名君に、私も真面目に耳を傾けた。

「俺、中学の時から親に言われて芸能活動を始めたんだ」

 知っている。だってご両親はとても有名な方だから、風名君がデビューした時の騒がれ方はすごかったもの。

「それでちょうど星越学園に入学した頃、芸能の仕事をやめようと思った時期があったんだ……マスコミから実力が伴っていない、ただの親の七光りだ、とかなんとか散々叩かれててさ」
「うん……」

 それも知っている。デビューしてすぐ人気者になった風名君が、色んな仕事をするようになった頃だ。

「学校でも友達だと思ってた奴らから影で悪口言われてるって知った時は、本気でやめようって思った……まあ別に自分でやりたくて始めた仕事じゃなかったし、未練なんてないからやめてもいいやって思ってたんだけど、やっぱり悔しかったんだ。それに確かに望んでなった職業ではないかもしれないけど、誰にでも出来る仕事じゃないしさ。努力して努力して、もうこれ以上出来ないってくらい努力してからでも、やめるのは遅くないんじゃないかって思って」

 うん。すごく努力しているのを私は知っている。――ああ、なんだ。私は風名君のこういう所が好きなんだ。

 改めて気付いた風名君の長所に笑みがこぼれる。