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私のやんごとなき王子様 風名編

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 「小日向お前凄いよ!」

 練習が終わり、食事当番である私は同じく当番である風名君と一緒にキッチンで野菜を切っていた。

 風名君が褒めてくれたのは、私がたどたどしくもオディール役の台詞を言い切る事が出来たから。もちろん演技の出来なんて酷いものだったけど、医務室から戻って来た先生の話しでは水原さんの具合はあまり良くないらしく、急遽船で病院へ行く事になったという。

 おかげで私の代役が本当にそのまま採用になってしまい、危うく気絶しかけたんだけど……だけど途中で投げ出す訳にもいかないし、こんなに風名君が笑顔で褒めてくれるのが嬉しいから頑張ろうかな、なんて思ってしまった。

「でも、全然水原さんみたいには出来ないし。やっと台詞が言えた程度だよ」
「そんな事ない。小日向がオデットじゃないのは残念だけど、オディールでも嬉しいよ。頑張ろうな」
「あ、ありがとう……」

 どうして風名君はそんなに私の事を気にしてくれるんだろう。優しいよな。

「っと、次は何すればいいんだ?」

 ピーラーでじゃがいもの皮をむき終えた風名君が辺りを見回す。
 今日私達が作るのは肉じゃが。全校生徒プラス先生の合計200人分の料理だから作る量がさすがに多い。私と風名君はじゃがいもの皮むきを今やっている。

「えっとね、今度は食べやすい大きさにじゃがいもを切るの」
「そっか。小日向は料理得意なの?」
「別に得意じゃないよ。お母さんのお手伝いをしたり、たまにお菓子焼いたりするくらい……って、風名君。それじゃあちょっと大きすぎるよ」

 私はふと隣りでじゃがいもを切る風名君の手元を見て苦笑する。

「え? 駄目か?」
「だってそれ半分じゃない。このくらいの大きさのじゃがいもだったら、四等分くらいがいいんじゃないかな?」
「ああ、そう言えば肉じゃがに入ってるじゃがいもとか人参って、一口大くらいだよな」
「そうだよ! ふふっ」

 何だかすっごく楽しいな。風名君とこうやって台所に立って料理作るなんて……夢みたい。