私のやんごとなき王子様 風名編
焼けた砂がサンダルの隙間から入り込んで、その熱で私の足を容赦なく攻撃して来る。
熱い……でも、それ以上に心が痛い。
「せんぱーーい!!」
ふと遠くから私を呼ぶ声に、泣きそうになって潤んだ目元をぐいっとこすって顔を上げる。
そこには波打ち際で遊んでいる潤君の姿があって、大きく手を振っていた。それに答えるように私も負けじと大きく手を振る。
「一緒に泳ぎませんかあーー!?」
「うーーん! 今行くーー!!」
潤君の笑顔にちょっとだけ救われたような気がして、私はサンダルを大げさに脱ぎ捨てて走り出した。
作品名:私のやんごとなき王子様 風名編 作家名:有馬音文