司令官は名古屋嬢 第2話 『大晦日の群像劇』
第4章 新兵器への道のり
同じ頃、
中京都軍の研究施設にて。
「……このロボットの電子回路をもとにすれば、この兵器の電子回路にも応用できるな……」
さまざまなコンピューター機器が並ぶ部屋で、研究主任である東山は、パソコンの画面を見ながら独り言をつぶやいた。そのパソコンの画面には、難しい数値などが整然と並んでいた。
その部屋の窓から眺めることができる大型のラボには、20メートルほどの高さのある金属の人型の物体が、たくさんの研究員や作業員に囲まれて立っていた。その金属の人型の物体は、モビルスーツに見えたが、まだ半分も完成していないようだった。
ピ−ピ−!! ピ−ピ−!!
そのとき、東山がいる部屋のどこかから電子音が鳴った。
「……なんだ! ただでさえ年末で忙しいのに……」
東山は、嫌々、白い研究服の胸ポケットにあるバッジを指で押した。
「何の用だ!?」
東山はバッジに向かって言った。そのバッジは小型通信機のようだ。
「……順調か?」
通信機の向こうから、素っ気無い男声がした。
その声を聞いた東山は、一瞬で目の色を変え、身震いした。
「……し、失礼しました!!! 山口様!!!」
相手は、CROSSの山口だった……。その声の後ろからは、作業音がしていた。
「……あの兵器の開発は進んでいるのか?」
山口は東山に尋ねた。
東山はラボのほうをちら見し、言葉を選びながら、
「……ええ、自界製モビルスーツの開発は進んでいます。すでに半分以上が完成していまして、あと1年あれば大丈夫です」
「……少しでも早く完成させろよ」
「はい!!! もちろんです!!!」
東山は、思わず敬礼しながら言った。ただ、彼の額には汗が浮かび出ていた……。
「……それじゃあな」
山口のその声の後、通信が終わった。
山口との通信が終わった後、東山は頭を抱えた。なにせ、まだ半分も完成していないのだ……。
「中途半端に完成させるのもまずいしな……」
そうつぶやくと東山は、ラボのほうを眺め始めた。
すると、彼の目に何か映ったらしく、彼は机の上にあったマイクを取り、口元に近づけた。
「Cのクレーンの近くにいる作業員!!! 仕事中にスマホをいじるな!!!」
東山の怒声がスピーカ−でラボ中に響いた。怒られた作業員の男性は、すぐにスマホをポケットにしまった。
東山は、マイクから手を離すと、すぐ後ろのテーブルの上にあるコーヒーを飲んだ。そして、どうすれば完成させられるのかを考え始めた。
作品名:司令官は名古屋嬢 第2話 『大晦日の群像劇』 作家名:やまさん