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司令官は名古屋嬢 第2話 『大晦日の群像劇』

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「あれ? 君、鳴海の友達の守山さんじゃない?」

 突然、守山の耳にさわやかな声が響いてきた。彼女は、声がしたほうに、すぐに顔を向ける。

 そこには、CROSSの軍服(下士官用・冬服)を着た男性が立っていた。その男性が誰かを守山は知っていた。
「……上社のお兄さんですか。仕事中じゃないんですか?」
「いや、今は休憩中さ」
その男性は、上社鳴海の兄だった。どこか、上社と同じ雰囲気をしていた。
「……CROSSのお仕事は大変ですか?」
守山は思わず彼に聞いた。上社の兄である彼は、CROSSの隊員なのだ。
「まぁ、危険な仕事なのは確かだね。でも、戦友はいい奴ばかりで楽しいよ」
「……そうですか」
素っ気なく喋る守山を、彼は不審に思ったらしく、
「どうしたの?」
彼はおそるおそる守山に尋ねた。
「……その、CROSSに入らないかと山口さんに誘われて……」
「CROSSの隊員に? 君が?」
「そうです。それも火器管制主任とかに」
「ああ、あの子の代わりか……」
「……あの、あの子って誰ですか?」
「ついこの前までいた女性隊員だよ」
「……お亡くなりになられたんですか?」
守山がそっと聞く。彼女だって、死ぬのは怖い。
「いや、契約が終わって辞めていっただけだよ」
彼はそう言うと、守山をじっと見つめる。その意味ありげな視線に気づいた守山は、
「……な、なにじろじろ見ているんですか!?」
と、少し戸惑いながら尋ねる。
「……個人的には、君はCROSSでも、十分にやっていけると思うよ?」
「え?」
「まぁ、決めるのは君だから。 それじゃ、失礼するよ。 あっ、よいお年を!」
そう言うと彼は、守山から離れてどこかに行ってしまった。また守山1人がその場に残された。

 彼女は、その場で佇んだ……。

 その場には、さまざまな作業音と寒い風が空しく響いていた……。