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司令官は名古屋嬢 第2話 『大晦日の群像劇』

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 連絡船のコクピットには、船長とパイロットがいた。二人は離陸準備を着々とこなしながら会話をしていた。
「しかし、今度の戦争はどうなるんでしょうね、船長」
「ああ、かなり犠牲が出るだろうな……。何せ相手は、モビルスーツ乗りとかじゃなくて、『悪魔』だからな」
「……この世界は大丈夫なんでしょうかね」
「まぁ、この世界の『管理者』は、幻想共和国にスポンサーがいるからな。ある程度は大丈夫じゃないか」
『…ピ−…離陸…備、ピ−…完了…す。ガリガリ』
 コクピットのコンピューターが不気味な電子音を立てながら、離陸できることを告げた。
「ちっ、いいかげんちゃんと修理しないとな」
「儲かっているんですし、新しい船に買い替えましょうよ」
「それはダメだ。この船は、私が軍人だったころからの長い付き合いなんだ」
そう言うと、船長はパイロットに離陸するように促した。パイロットは無言でうなずくと、操縦桿を握った。
 次の瞬間には、連絡船の船体は地面の滑走路から垂直に浮かび上がっていた。

   キュイ−−−ン!!!!!!

 その時、連絡船のコクピットに耳をつんざくような音が響いてきた。
「……何の音でしょうか?」
連絡船はゆっくりと高度を上げながら、前進を始めていた。船長は無言で、この音の発信源を探ろうと、コクピットのガラスの向こうを凝視していた。すると、すぐに船長の顔つきが変わり、
「前から戦闘機が来るぞ!!! すぐにかわせ!!!」
船長のその声に、パイロットは思わず右に舵をとった。だが戦闘機は、もう目の前に迫っていた……。
「馬鹿!!! 左だ!!!」

   キュイーーーン!!!!!!!!!

 パイロットが反応するより前に、前から来た戦闘機は連絡船スレスレの位置を一瞬で通り過ぎていった。その戦闘機は軽やかに連絡船を避けていた。船長とパイロットはあっけを取られていた。
「……あの状況で避けることができるなんて、あの戦闘機のパイロットは相当の腕前の持ち主でしょうね」
「……いや、あの戦闘機には誰も乗っていなかったぞ」
「……え?」
「コンピューターによる自動操縦ってことだよ。うかうかしてるとこの連絡船も自動操縦にされちまうぞ」
「もしそうなったら、僕たちはお払い箱ですね」
「そうならんことを願おう」
「はい」

 連絡船を華麗に避けた無人戦闘機は、空中で再び体勢を整えると滑走路に着陸した。戦闘機がスピードを落としながら滑走路を走っていくなか、連絡船は電流を発している『世界の裂け目』の向こうへとノロノロと消えていった……。
 そこに上社が、煙を吹き出し始めている発煙筒を持って、滑走路へ駆け寄ってきた。彼は事故が起きなかったことを確認すると、安堵の表情を見せた。