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司令官は名古屋嬢 第2話 『大晦日の群像劇』

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 滑走路に降り立った戦闘機は、滑走路脇にゆっくりと停止した。そして、エンジン音がいくらか静かになった。
 その戦闘機は、現役クラスの『ミグ29』だったが、どうやら中古の機体のようで、前のマークが印されていたと思われる部分はペンキで塗りつぶされていた。ただ、今は、中京都軍のマークがある。

 その戦闘機に、上社がおそるおそる近づいてきた。戦闘機の機体に取り付けられているカメラの一つが、上社をじっと見始めた。そのカメラの動きに、上社は思わず身構えた。やがて、戦闘機の機体のどこからか、
『中京都軍の上社少尉殿ですね? CROSSの山口少佐からの御命令により、こちらにお伺いました!』
「……あっ! そ、そうですか……」
突然のコンピューター音声に、上社はたじろいだ。どうやら、自動操縦システムだけでなく、「コミュニケーション機能」も搭載されているらしい。どちらにしろ、上社は味方と認識していることにひとまず安心したようであった。
『次の指示を願います!』
戦闘機はエンジン音に負けない「音量」で元気よく言った。上社は、すぐ近くに誰もいないことを確認すると、
「……それじゃあ、あそこの空の倉庫の中で、停止していてください」
上社はぎこちない口調の小声で、戦闘機に指示した。
 彼がすぐ近くに人がいないことを確認したのは、戦闘機といういわゆる「物」に対して話しかけるのに抵抗があったのだろう。それと、戦闘機に話しかけているところを人に見られようものなら、頭がおかしくなったと誤解されてしまうと思ったのだろう。
『了承しました!』
しゃべる戦闘機はそう言うと、指示された倉庫へエンジン音を立てながら向かって行った。

 その倉庫は、かつて日本最大だった航空会社がジャンボジェット機の保管に使用していた大きな倉庫であった……。今はプロペラ機すら無かった……。
 つい10年ほど前までは、この空港『セントレア』は、世界中の航空機や外国人がたくさん来るにぎわいをみせていたが、今はただ、近くの異次元ステーションからの連絡船しかこなかった。それは、この空港だけに留まらず、日本中の空港がその有り様だった……。
 原因は、実権を握ったCROSSが『異次元進出』をお題目として、手当たり次第に空港や航空機を接収してしまったことにあるだろう。接収された航空機は、爆撃機などに改造された後に異次元中に売り飛ばされ、異次元の植民地獲得のためなどの武器や兵器や魔術書などに変化した……。 接収された一部の空港は異次元における数少ない友軍の基地にまでなった。
 この空港の扱いは、異次元からの来客に利用されたり整備が行き届いていたりするだけマシであった……。

 倉庫へ向かう戦闘機を上社が見送っていると、そこに佐世保がタバコをくわえながらやってきた。
「だから大丈夫だって言ったでしょ。 異次元の最先端のコンピューターなんだから」
「……そうみたいですね」
「そうだ! あとで乗ってみたら?」
「……せ、戦闘機の操縦なんてできませんよ!」
「だ・か・ら! 自動操縦でしょうが! 高所やGに慣れる練習だと思って、あとで乗りなさい!」
「……今からじゃなくて、あとでってどういうことですか?」
「……どういうことって、あんた、大須に電話するんじゃなかったの?」
「あっ!!! そうでした!!!」

 その時、生放送が始まる8時を少し過ぎてしまっていた……。