司令官は名古屋嬢 第2話 『大晦日の群像劇』
「あんたにそんなことできるの?」
佐世保は冷たくそう聞いてきた。その時、ちょうどタバコを吸い終わったようで、佐世保は吸殻を床に捨てて踏んでいた。
「……も、もちろんです」
上社は弱々しくそう言った。そんな上社に、佐世保はため息をついた。
「……まぁいいわ。 それより、そろそろ無人戦闘機が着陸するわよ」
「……え? 無人戦闘機? 何ですかそれ?」
上社は何のことだがわからないという顔をしていた。
「何って、コンピューター制御の完全自動式の戦闘機よ。連絡きたでしょ?」
「……いいえ、初耳ですが……」
「……あの馬鹿! また連絡を忘れたな!」
そう憤ると、佐世保はポケットからタバコを取り出し、また吸い始めた。
「中京都軍に航空部隊をつくるっていう話があったでしょう?」
「山口少佐が大須さんに話していたことですよね」
「それを人ではなく、異次元から取り寄せた最新式のコンピューターで運用していこうっていうことに決定したのよ。昨日の夜、居酒屋で」
「え〜〜!!! 大須大尉が、今朝の8時にテレビの生放送で、航空部隊の隊員募集のことを言っちゃうらしいですよ」
「すぐに連絡してやめさせなさい!!! いろいろとややこしいことが起きるから!!!」
「はい!!!」
上社はすぐにポケットからスマホを取り出した。
「定期連絡船『コンフォート』より管制塔へ。これより離陸する」
そのとき、管制塔の無線機から、先ほど滑走路に着陸した連絡船から雑音混じりの通信が入った。この空港から飛び立つようだ。
「あ、まずい!!! 無人戦闘機が着陸する!!!」
上社はケータイをしまうと、一目散に無線機に駆け寄る。
「……ちゃんと避けてくれるから大丈夫よ。それにあの連絡船は「回送」で乗客はいないでしょう」
佐世保はタバコを吹かしながら言った。そんな佐世保を上社は無視し、無線機のマイクに口を近づけた。
「管制塔より『コンフォート』、ただちにその位置で停止してください!!!」
「………………」
無線機の向こうの連絡船からの返事は無かった。上社は、もう一度同じ言葉を繰り返した。だが、連絡船からの返事は無かった。
「あの連絡船は古い船らしいから、無線機が壊れちゃっているのかもね」
佐世保のその言葉を聞いた上社は、今度はステンレス製の棚に駆け寄り、棚の中から筒状の「発煙筒」を取り出した。「発煙筒」の煙で、連絡船にサインを送るつもりなのだろう。そして、上社は管制室から飛び出していった。
キュイ−−−ン!!!!!!
その時、耳をつんざくような音が響いてきた。その音は間違いなく、戦闘機によるものだった……。
作品名:司令官は名古屋嬢 第2話 『大晦日の群像劇』 作家名:やまさん