司令官は名古屋嬢 第2話 『大晦日の群像劇』
そして、守山は大須のすぐとなりに追いつくと、何がヤバいのかを大須に尋ねた。大須はテレビ塔のてっぺんを指さしてから、
「テレビ塔には、軍用チャンネルや異次元通信とかの大事な異次元アンテナが設置されているの……。 それが壊されたらマズいのよね……」
「そういえばそうでしたね……。だから、展望台が閉鎖されちゃったんでしたよね……」
「……まぁ、とにかくマズいわけよ」
そう大須が言い終わったとき、前を走っていた山口が、お腹を押さえてしゃがみこんでしまった。山口の元に、大須たちが急いで駆け寄る。
「山口さん! 大丈夫ですか!?」
大須が心配そうに山口に言った。山口は顔面ブルーレイになっており、苦しそうに声を振り絞って答えた。
「……さ、さっきの、かき氷で、お腹が……」
山口のその答えに、大須たちはズッコケそうになった……。
「この寒い時季にかき氷なんか食べたら、お腹こわすに決まってます!!!」
守山が山口に怒鳴った。
「そ、そんなに怒るなよ、ささくれちゃん」
「笹百合(ささゆり)です!!!」
守山はさらに怒鳴った……。
「……お腹が痛くて銃を撃てない……」
山口は顔が水にぬれたアンパンマンみたいな口調でそう言うと、持っていた大型ライフルを地面にカチャリと置いた。すると、青く光っていたそのライフルの弾倉は元の弾倉に戻ってしまった。
「撃てないって、それじゃあ、あの悪魔をどうやって攻撃すりゃいいんです! 山口しか魔弾を撃てないんですよ!」
それを聞いた山口は少し考えた。
そのあいだにも、悪魔はゆっくりとテレビ塔をよじ登っていく……。周りにいた兵士たちは悪魔に向かって撃ったが、悪魔は無視した。
そこで山口は、空を一通り見回してから、腹を押さえながら口を開いた。
「……い、いや、オレの魔弾以外にも攻撃方法が、あるぞ……。お、おい! その通信機を貸せ!」
山口は、近くにいた背中に通信機を背負った兵士を呼び寄せた。
作品名:司令官は名古屋嬢 第2話 『大晦日の群像劇』 作家名:やまさん