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司令官は名古屋嬢 第2話 『大晦日の群像劇』

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 しばらく、大須と守山は気まずそうに黙っていた。大須は、守山の上官であり先輩だ。守山は、そんな大須をさておき、部下であり後輩である自分が出世してもいいものだろうかと悩んでいた。そして、大須のほうは、危険な異次元に、自分の大切な部下であり後輩である守山を送り出してもいいものだろうかと悩んでいた……。
 そのころ、カウンター席にいる山口は、上に乗ってるアイスクリームを食べ終え、かき氷の小倉氷を、2人のことなど気にせずに食べ始めていた……。

「……ささちゃんの人生なんだから、好きなほうを選んで……」
その場の沈黙を破って、大須が優しく守山に言った。守山は無言でうなずいた。守山は泣きそうになっていた。
「……断りづらいなら、私が代わりに山口に伝えてあげるから……」
大須が山口のほうに目くばせしてから言った。

   グスッ グスッ

 ……守山は、とうとう顔を下げて泣き始めてしまった……。
「……す、すいません……グスッ……」
守山は泣きながら言った。
 泣き出してしまったことに大須は、山口のほうをにらんだ。山口も守山が泣き出してしまったことに気づき、さらに、大須が自分をにらんでいるということにも気づくと、山口は食べるのをやめ、持っていたスプーンをテーブルに置いた。
「……た…確かに……CROSSに……グスッ……入ることは……私の……グスッ……私の夢でした……。 ……でも、ナナねぇといっしょに……グスッ……仕事したい」
「……そう……」
大須はただあいづちをうっていた。それは、大須にもこんなときにはどう接すればいいのかがわからなかったからだ。山口は、この場から早く立ち去りたそうにしている……。

「あの、お客さま、大丈夫ですか?」

 声がしたほうを大須が見てみると、(守山は顔を下にして、ひたすら泣き続けている。)ウェイトレスの女性が泣いている守山を心配そうに見ていた。よく見ると、大須たちの周りにいた客の何人かも心配そうに見ていた。
「……大丈夫です……」
守山は泣きながらウェイトレスにそう言った。ウェイトレスは無言でうなずくと、元いたカウンターのほうに戻っていった。それと同時に守山を見ていた客も視点を元に戻した。山口は、再び食べ始めたようだが、どこか落ち着かない様子だった。
 大須は守山をしっかりと正面から見据えると口を開いた。
「場所を変える? 尾行しないように、山口に話をつけてくるし」
守山はハンカチで涙を拭き取った後、
「そうします……」
守山の返事を聞くないやな、大須は立ち上がり、真剣な眼差しで山口がいるカウンター席に向かって行った。山口は、大須が近づいてきたことに気づいたらしく、舌打ちした後にスプーンをテーブルに置いた。