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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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み・え・る…

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 だから、わたしたちは、いったん正門をでてから、回り道をして、裏門から学校にもどり、講堂の裏口に集まったの。
 立ち入り禁止になっている割には、簡単に入れるんだ。だって、いたずらな男子が、鍵を壊しちゃうんだもん。
 先生はそのたびに鍵を強いものに替えたりしていろいろ苦心しているんだけど。
 今日、わたしたちが入るのだって、鍵のはずしかたを男子に教わったから。
 四時婆の正体を、誰かがあばくまで、先生には鍵が壊れた(正確には壊した)ことは内緒にするって、わたしたち六年生みんなできめたんだ。
 でも、実際のところ、今まで、四時婆を見たって言う人は、だれもいない。
 われこそはって名乗りを上げた何人かが、講堂に忍び込んだけど、
 鏡か何かに反射した光にびっくりして……
 飛び出してきた野良猫におどろいて……
 振動で、積み上げられてたいすが落っこちてきた音に怖がって……
 結局、みんな逃げ帰ってきちゃうんだもん。
 探検は、わたしたちのグループが最後になったの。
 これで、なんにもなければ、講堂はただの物置で、つまらない場所に決定になる。
 だから、わたしたちの責任は重大ってわけ。
 こうなったら、なんとしても四時婆の姿を見なくちゃ。
 わたしはお姉ちゃんから借りた携帯を握りしめた。
 これで、ばっちり四時婆の姿を撮るんだ。
 
 机やいすは、廊下に積み上げられていて、中へはいるには、ひとりずつがやっとだった。
「こほこほ。すごい。ほこり」
「ハンカチ、口に当てようよ」
「そうだね」
 わたしたち四人は、何とか、講堂の中まで進んだ。
 窓際にはぼろぼろのカーテンが掛かっている。さいわい、窓際にはなにも置いていなかったので、ぼんやりとした明るさはある。
「なんにもないじゃん」
 アキちゃんがつまらなそうに言った。
「よかった」
 サッコは安心したように胸をなで下ろした。
 そんなサッコにミサちゃんが、
「よかったね」
と、声をかけた。
 わたしは天井を見上げた。雨漏りがしているみたいで、天井にシミができている。
 じっと見ていたら、それがおばあさんのように見えてきた。
「あ」
 わたしが声を上げると、みんな一斉に天井を見上げた。
「おばあさんみたい」
「うん。見える見える」
「もしかしたら、これが四時婆の正体?」
 みんな口々に言った。
作品名:み・え・る… 作家名:せき あゆみ