み・え・る…
「チコ。写真とって。これが四時婆の正体だって」
「うん」
わたしは携帯を天井に向けて、何枚か写真を撮った。
「じゃあ、帰ろうか」
わたしが先頭になって講堂から出るときだった。
「きゃ」
一番後ろにいたミサちゃんが悲鳴をあげた。「どうしたの?」
「誰かが。肩をたたいたの」
わたしたちは顔を見合わせた。それからゆっくり回りをみまわした。
だれもいない。
「はやく、でよう」
アキちゃんが駆けだした。と同時にサッコも駆けだしたので、二人がぶつかって、もつれるように倒れた。
「いたた」
「だいじょうぶ? ふたりとも」
わたしは、サッコの手をひき、ミサちゃんがアキちゃんの手を引いて起きあがらせると、いっしょに外に出た。
「ふう、いい空気ね」
ほっとしたわたしたちは、深呼吸した。
撮った写真を見てみたら、古ぼけた染みだらけの、ただの天井しか写っていなかったので、削除しちゃった。
「な〜んだ。つまんない」
次の日、学校へ行くと、三人ともお休みだって。先生は、三人がけがをしたというの。
わたしは一日中、落ち着かなくて、放課後になると、学校を飛び出して、真っ先に、一番近いサッコの家に行った。
「捻挫しちゃったの。アキちゃんといっしょに転んだときよね」
サッコの家からアキちゃんちに電話をすると、やっぱりアキちゃんも捻挫をしていた。
ふたりの話を聞いて、わたしは少しほっとしたの。
だって、たたりとかだったらいやでしょ。
「じゃあ、ミサちゃんは」
ミサちゃんに電話をすると、肩が腫れて腕があがらないっていう。
それも、昨日、あの場所で、誰かにたたかれた肩だって。
わたしはそのとき初めて、ぞっとした。
ミサちゃんはお医者さんにいって治療してもらったら、だいぶよくなったって言ったので、わたしは安心した。
「でも、もう二度と行かない」
ミサちゃんは何かを感じたみたいだった。
わたしにはなにも起きないので、霊感が弱くてよかった、なんて気楽に構えていたの。
夜、お姉ちゃんが血相替えて、わたしの部屋に入ってきた。
「チコ、なによ、これ」
怒って携帯をつきだしてきた。
「なにって、昨日とったのは削除し…」
わたしはのぞいてみて、まるで水をかけられたようにぞっとした。
画面一杯に青白いおばあさんの顔が写っている。