勇者と魔王の決意 リメイク版
勇者は、火傷してない彼の大きな右手を優しく握った。
勇者の顔は今にも泣きそうな顔だ。
勇者ワールド「俺が早くここに来ていれば・・・
あんたを助けられたかもしれないのに。」
孤独の帝王「・・・死ぬ前に頼みがある・・・
・・・妻と小さな子供達を守ってくれ。
地下の隠し扉のトンネルの先にいるはずだ。」
勇者は頷いて地下の隠し扉へ向かった。
その後ろ姿を見ながら、彼は初めて涙を流した。
孤独の帝王「死ぬ前にお前に会えて良かった。
もし、お互い生まれ変わったら・・・
お前と共に・・・」
そう言って彼は目を閉じた。
宿屋で寝ていた勇者達は長い眠りから覚めた。
勇者エデン「スカルさん、あんたも不思議な夢を見たか?
まるで、歴史書の世界の中にいるみたいだったな。」
スカル「・・・ああ、見たよ・・・・
あれは、本当の話なのだろうか?」
孤独の帝王・・・
勇者ワールドホープ・・・
死者の神・・・
この名前を聞いたような気がする。
勇者エデン「そういえば、孤独の帝王が
魔族を人にしたって言ってたけど・・・
なのに、魔物がいるのは何故なんだ?」
スカル「・・・他の魔王が魔族たちを元に戻したかもな。
全ての魔族ではないかもしれんが・・・
魔物に戻っているようだ。」
勇者エデン「そういえば、何で100年前の世界が
夢の中に現れたのかな?」
スカル「・・・100年前の歴史書を読んだせいかもな。
だが、そんな事を気にしてる暇はない。
次の町に行こう。」
勇者たちは、村人たちに見送られながら、
この村の北の崖の先にある町へ向かった。
第一章「孤独を恐れた魔王」 完
第二章「誇り高き獅子」
「獅子の町」という名の町は、
村の外や町の周りに獅子の銅像が数え切れないくらい並んでいた。
村人達は、首に獅子の形をしたペンダントを下げている。
娘「ようこそ。獅子の町へ!
ここは、誇り高い獅子の魔物に守られている町です。」
勇者エデン「魔物がこの町を守ってる!?
そりゃ珍しいな。
魔物は村を襲うことが多いのに・・・」
勇者は、疑うような表情でそう言った。
なぜなら、魔物が町を守るなんてありえないからだ。
娘「この村に災いが起きたときに、
獅子の魔物が、この町を救ってくれてんです。
例えば、町に魔物が襲って来たら退治したり、
食物危機のときに食べ物を運んでくれたり、
だから、獅子の魔物を町の守り神として
崇めているんです。」
娘は獅子の銅像を見ながら、
にっこりと微笑んだ。
娘「そういえば、その獅子の魔物と同じ名前の剣士が現れたんです。
町の広場にいますから、会って来たらどうでしょうか?」
勇者達は娘の案内で広場へ向かった。
村人達に歓迎されてる男がいた。
剣士レオン「俺に任せてくれ!
町の人々を困らせる岩の魔物を粉々にしてみせよう!
剣士レオンストーンの手で!」
男の顔はどことなく獅子に似た顔だ。
髪型も獅子の鬣に似て、
目の色も獅子の目ようだ。
男「あの魔物が住みついてから・・・
獅子の森の木に生ってる果物や、薬になる植物が採りに
行けなくなったんです。
このままでは、町の人々が暮らしにくい町になる・・・
お願いします!剣士レオン様!」
レオンは、自分を見ていた勇者たちに気づいた。
剣士レオン「優男と少年。お前達は旅人か?
それとも、観光に来たのか?」
勇者エデン「俺たちは、魔王征伐の旅の途中だ。
俺は少年じゃない!勇者エデンホープだ。
隣にいるのは仲間のスカルラドーさんだ!」
レオンは、勇者の言葉に腹を抱えて笑った。
剣士レオン「お前達が魔王征伐だと!?
優男と少年偽勇者に倒せるのか?
面白いジョークだ!」
勇者エデン「お前より早く森の魔物を退治してやる!
俺たちを馬鹿にするなよ!」
勇者は、顔を真っ赤にして怒鳴った。
スカル「・・・勇者殿。森の魔物は毒を持ってる。
それに、岩の魔物は硬いぞ。
レオン殿と協力して倒した方が・・・」
スカルは、レオンに聞こえないように
勇者の耳元で囁いた。
勇者エデン「お前の手を借りず、倒してやるからな!」
頭に血が上った勇者は、スカルの言葉を無視した。
剣士レオン「生意気な奴だ!
俺は先に森に行くからな!」
男「レオン様~
獅子の森は、道が複雑なので注意してくださいね。」
レオンは森の方へ走って行った。
勇者エデン「俺たちも早く行こうスカルさん!」
スカル「私が毒を治療する魔法を覚えてから、
森へ行った方がいい。
毒を早く治療しないと死ぬぞ。」
スカルは、無謀な状態で森に行きそうな
勇者を引き止めた。
勇者エデン「でも、あいつに先に倒されたら・・・
俺たち笑い者だよ。」
スカル「・・・獅子の森は道が複雑だ。
きっと簡単に奥には行けないさ。」
勇者エデン「わかったよ。スカルさんを信じるよ。」
勇者たちは、毒を治療する魔法を覚える為に、
1時間程戦った。
そして、スカルのレベルが13になって、
ようやく毒を治療するポイズンデリートを覚えた。
勇者たちは、安全な状態で森へ向かった。
森の木の下にレオンが座って呻いていた。
どうやら、森の魔物の毒にやられたらしい。
顔色がよくない状態だ。
スカルはしゃがんでレオンの傷口に手をかざした。
剣士レオン「うっ・・・痛みが治まった。
優男・・・
俺は、お前たちを馬鹿にしたのになぜ助ける?」
スカル「勇者殿は、お前と勝負したいらしい。
だから、こんな所で死なせたくないだけだ。
君は、毒の治療薬も持たずにここに来たようだな・・・
どうして、そんな無謀なことを・・・」
剣士レオン「森の奥に住む岩の魔物を早く倒し、
町の人々を安心させたかったんだ!
だから、無謀と知りつつここに来た!
しかし、魔物の毒にやられて・・・
まさか優男に助けられるとは・・・
俺は情けないな・・・」
レオンは、スカルの顔から目を逸らした。
作品名:勇者と魔王の決意 リメイク版 作家名:マサトシ