勇者と魔王の決意 リメイク版
魔界会議とは、世界各地の魔王たちが地獄に集まり、
互いに情報を提供したり、人間たちをどうやって
支配するか相談したり、世界を支配しようとする
魔王たちが開く会議だ。
魔界会議の発案者は私の伯父だ。
伯父はこの会議の責任者でもある。
私は、伯父の補佐役だ。
世界地図が広げられているテーブルに
十二人の魔王たちが椅子に座っていた。
彼は伯父の隣の席に座った。
伯父は死者の神(デスゴット)と他の魔王たちに呼ばれ、
魔族にも人間にも恐れられている存在らしい・・・
死者の神「どうした顔色が良くないぞ。
お前は、わしの後継ぎなのだからしっかりしてくれぬか?」
伯父が彼に小声で囁いた。
孤独の帝王「・・・あなたには私の苦労は分からない。
私は、孤独でこの世界を支配しなければいけないんだ!」
彼は椅子から立ち上がった。
感情のないはずの彼が怒鳴ったので、
周りにいる魔王達は驚いた。
死者の神「諦めろ!それがお前の運命だ!
まさか、孤独が怖いのか!?
魔王マーダラスエンペラーの息子も、
いつのまにか臆病になったものだ・・・」
孤独の帝王「・・・部下達や妻より長く生きる・・・
とても虚しいことじゃないか。」
彼はそう言って姿を消した。
死者の神「・・・・・・」
彼は自分の城に戻り、部下達にこう言った。
孤独の帝王「私は、例の術でくだらない戦いを終わらそうと思う!
お前達が、世界破壊を楽しみたいなら他の魔王の所へ行け・・・」
部下達は、他の魔王の所へ行ってしまった。
残ったのは、彼を慕っていた小さな子供の魔物たちだけ・・・
獅子の魔物「魔王様、僕たちがいるから安心してね!」
氷の魔女「魔王様の奥さんと赤ちゃんも守るわ!」
嵐の魔術師「魔王さまの傍にいるよ~
だって、あたしたちのこと守ってくれたもん!」
闇の虎「魔王様に借りた恩を返したいんです!」
私に感情があれば泣いてしまったかもな・・・
きっと、この子たちなら私の妻と息子を・・・
命がけで守ってくれるだろう。
孤独の帝王「では、妻と一緒に脱出してくれるか?
君たちには、私の大事な存在を守ってほしい・・・」
私に手を貸した罪で、魔王たちに処刑されてしまう・・・
だから、外の世界へ逃げてくれ。
魔王は、魔物の子供たちと共に妻のいる部屋へ向かった。
彼の妻は、人に似た姿の魔物だ。
その感情も人と同じ・・・
長い茶髪の髪、優しげな紫色の瞳・・・
そんな妻に彼は事情を話した。
マジックプリンセス「あの術を使うのね・・・
人と魔族の闘いを終わらせるために・・・」
マジックプリンセス「あなたは人型の魔族の私を・・・
嫌わずに接してくれた優しい魔王よ。
だから、私も逃げずにあなたに強力したいの。」
魔王は首を振って、妻を優しく抱きしめた。
孤独の帝王「・・・マリー・・・君は、子供たちと共に脱出してくれ。
私は、君とお腹にいる息子を失いたくない・・・」
マリーという名は、彼が彼女に付けた愛称だ。
彼女は、涙を流しながら無言で頷いた。
妻は、子供の魔物たちと共に
城の地下の隠し扉の先のトンネルへと向かった。
遠い外の世界へ繋がってるトンネルだ。
彼は王の間へ行き、魔方陣が描かれた床へ座った。
孤独の帝王「・・・さて、禁断の術を唱えるか・・・
人と魔族の闘いを終わらす為に・・・」
両目を閉じて呪文を唱えだした。
孤独の帝王「全ての世界の魔族たちよ・・・
己の力を捨て人として生き、
心も人と同じ存在に・・・」
彼の城の外に十二人の魔王たちが来るのが見える。
どうやら、彼の部下だった者たちが
彼の反逆行為を伝えてしまったらしい・・・
王の間の扉の周りにバリアを張ったが・・・
無意味かもしれん・・・
死者の神「お前は我々に反逆する気か!
その術で魔族を人に変えても、
人同士で争うかもしれんぞ!
それでもいいのか!」
伯父は、両手で扉を吹き飛ばして怒鳴った。
伯父の後ろにいる十一人の魔王達は、
彼を睨んでいる。
孤独の帝王「・・・魔王を守るのは魔族の務め・・・
守る者がいなかったら、魔王も行動力が下がる。
しばらく、無駄な争いは止まる。」
伯父は呆れた顔でため息をついた。
死者の神「とにかく、その術は止めろ!
そうすればお前を見逃してやる。」
孤独の帝王「もう遅い・・・
禁断の術は完成した。」
伯父は左手に持った剣を
彼の心臓に向けた。
死者の神「・・・お前はわしの兄の子。
そして、わしの甥だ。
だから、殺したくなかったが・・・
魔王の掟だ。死刑にする。」
伯父は、剣を彼の心臓に突き刺した。
他の魔王達は、地獄の炎で彼の体を火あぶりにした。
なのに彼は抵抗しなかった。
十二人の魔王たちが相手では勝ち目がない・・・
そう思ったから何も出来なかった。
死者の神「傷の痛みに苦しみながら一人で死ね・・・
裏切り者の魔王ロンリーエンペラー。」
伯父と他の魔王たちは、
彼を嘲笑いながら姿を消した。
彼は、禁断の術で魔力を使い果たした・・・
だから、傷の回復が出来なかった。
魔力を回復させる体力もない・・・
ここで一人で死ぬのか・・・
せめて、死ぬ前に息子が生まれる所を見たかった。
勇者ワールドホープ・・・
私の選んだ人生は間違ってないか?
???「しっかりしろ!何があったんだ!
酷い火傷だ・・・
待ってろ、回復薬を飲ませてやるから」
誰かが私を呼んでいる声が聞こえる。
聞き覚えがある声だ。
彼は、痛みを堪えながら目を開けた。
孤独の帝王「わ、私に人間の・・・回復薬は効かん。
腰抜け勇者よ、何故ここに来た。
どうせ、またくだらんことを言いに来たのだろ?」
彼は苦笑しながら、勇者の顔を見た。
孤独の帝王「・・・私は他の魔王たちに処刑された。
私が、禁断の術で魔族を人に変えたからな・・・
魔族がいなければ魔王は・・・
世界各地を攻めることが出来ない・・・
きっと争いが減る。」
作品名:勇者と魔王の決意 リメイク版 作家名:マサトシ