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YEAH!! 年末

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「馬鹿ねぇ。あたしの力があれば、こんなアパートすぐに出ていけるのよ? これからは、女の子だって選び放題、友達にだって不自由しないわ」
 挑発する視線が絡み合い、木枯しより冷たい沈黙が流れた。
「たっだいまー! なんとか間に合ったぜ!」
 藤宮の脳天気な声と帰還が、緊張を打ち消してしまう。まるで何事もなかったかのように、猫はにゃーと啼いて藤宮の足にまつわりつき、影山はそっぽを向いて座った。
「ビールでも買ってきたのか?」
「え? あ……」
 はしゃいで全く気付かなかったという風情で、藤宮が固まる。
「だってホラ、先に現金見せようと思ってさ! 五万だぜ! 五万!」
 確かに一万円札を五枚、両手で扇状に広げ、部屋をくるくる回った。そして、猫を抱き上げて頬ずりする。
「いい子だなーお前は。おとなしいし、あったかいし。ずーっとうちにいられたらいいのになー」
「アパートは生き物禁止だ!」
 藤宮の不吉な言葉に、影山が激しく釘を刺した。反論できない藤宮は、ちょっと恨めしそうに影山を見る。しかし、その顔に浮いたブツブツと全身をせわしなく掻く仕草に、アレルギーでは仕方ないと、改めて距離を取った。
 結局その夜は、藤宮は布団に猫を入れて、一緒に眠った。影山といえば、狭い部屋のそれでも隅で布団にくるまり、その寝姿を恨めしく眺めている。
(チキショー! あんな、いい磁場の特等席に居座りやがって──。ちょっと俺よりモフモフしてるからってイイ気になってんじゃねぇ! 図々しいんだよ!クソが!)
 ハラワタが煮えくり返り、歯も抜けんばかりに噛み締めるのであった。


 クリスマス前のキャンパスには、もう学生の姿はまばらである。短期バイトの季節、ウィンタースポーツの季節、そしてインフルエンザの季節でもある。
 そのカフェテリアで、藤宮は溜息をついた。
「はぁ……。参ったなぁ……」
 悩みのタネは、あの三毛猫だった。元々動物は好きだから、飼うことはまったくやぶさかではないのだ。しかし、環境がそれを許さない。
 今朝、ゴミ捨て場で猫の声をお隣に指摘されて釘をさされたことを思い出す。
(やっぱりアパートはムリかな。大家向かいだし。親のところは……犬いるしなぁ。あいつワガママだし)
作品名:YEAH!! 年末 作家名:蒼戸あや