YEAH!! 年末
ページが表示されるまで数十秒。そして、その番号を照合するまで、また十数秒……。
藤宮の、携帯を持つ手が、震えた。
「──わーっ! 当たってる! 当たってる! 五万円!」
上ずった叫びを上げる。バンザイして、くるくると回転して喜んだ。そして猫を抱いて振り回す。
「すんげー! すごいぞお前! 俺、すぐに換金してもらってくる!」
満面の笑顔で、藤宮は駆け出して行った。
後に残されたのは、猫と影山である。
猫は簡易クローゼットの上に陣取り、影山を見下ろしている。常に相手より高い目線をキープするのは野生の本能だろう。
寒々しい部屋に、見合ったままで重い沈黙が流れた。互いに、一歩も譲らない構えだ。
「……何しにきやがった」
その沈黙を破ったのは、影山だった。苦々しく声を搾り出す。
「それはこっちのセリフよ」
猫は可憐な声を発した。影山は別に驚かない。
「最近この辺りでよく見ると思ってたら──こんな所にいたのねぇ」
たしなめるような物言いに、影山が一層憎々しげに顔を歪める。
「アラアラ怖い顔」
猫は笑って、自分の身繕いなどして見せる。
「ちょっといい波長の坊やだからついてきたら、とんだ先客がいたものね」
「いい波長だぁ? 福の神とは縁のない器だぜ」
影山が、唾棄するように言った。猫はまたふふふと笑う。
「いいのよ、私はそういうの気にしないから」
影山が派手に舌打ちする。
そう、猫は福の神だった。厄病神たる影山からすれば、まぁ天敵と言えよう。
その猫は、藤宮の出て行った玄関に視線を投げ溜息をつく。
「ほんと、悪いわねぇ。でも福の神と厄病神が一緒になんていられないもの」
「何言ってんだか。意味不明だな」
「あんたが帰ってから、臭くてたまらないのよ。あんただって、痒くて大変なんじゃない? もう首にまで湿疹浮いてるわよ」
獣の形のくせに自分は臭くないつもりなのかと、影山はますます不愉快だった。ボリボリと背中やら足やら首やらを掻きむしりながら、相変わらず猫を睨みつけている。だが、その姿では勝負は目に見えていると、影山の口の端が上がる。
「お前が出て行けば無問題だ」
「あんたが決めることじゃないでしょ。あの坊やが、なんて言うかしらねぇ」
「アイツじゃねぇ。大家がペット禁止って決めてんだ。この四足野郎」