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生きてるって素ン晴らしい!

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「……くそっ。思い出すと暗くなってくるな……」
 神出鬼没の影山が、大学に顔を出したこともあった。
『よー、藤宮。金貸して』
『またパチスロかよ』
『いーじゃんか、黙って出せよ。後で倍にして返してやるから』
『そんなこと言って、返したことないだろ』
『じゃあ昼飯代だけ! 千円だけ貸して』
 キャンパスで誰かが自分を探してくれることなんて、それまでなかった。たかられたことよりも、それが少し嬉しくて、悪い気はしなかった。が、それを見ていた友人らは一様に引いたようだ。
『藤宮……。お前、友達選べよ?』
『え? ……うん』
 親切な忠告のつもりだったかもしれない。けれどそう言ったのは、入学してすぐに『友達じゃない』と言い放った男だ。サークルの中心にいて合コン三昧、彼女持ちの彼には、さぞ奇異な光景だったのだろう。
 今思い出しても、カオスな感情が胸に渦巻く。
「……どーせ……。選ぶほど友達なんかいねーし……」
 口に出してみると、余計惨めで、藤宮は畳の上に寝転んだ。
 中学でインフルエンザで一週間休んだ後、クラスメイトに当たり前に登校拒否だと思われていた。最後まで、インフルエンザだと信じてもらえなかった。去年の大風邪で大学を十日休んだ後は、登校しても休みに気づかれてもいなかった。もとより、携帯に通話もメールも着信記録なんてない。
(……今日俺が死んだって、誰も気にしたりしないんだろうな)
 かろうじて、影山は気づいてくれるだろうか。それとも、さっさと見限ってどこかへ消えてしまうだろうか。
「俺、……やっぱりあいつにいいように騙されてるのかな」
 それでもいいや、と思ってしまう。友達に値しない自分でも、利用価値があるなら、まだマシだと思える。
 夕立でもきているのだろうか。窓が激しく軋んでいる。
「暑い……。ちょっと窓開けようかな」
 突然、電話が鳴り響いた。家族が置いていったファックス電話だ。セールスのおかげで、携帯よりは余程鳴る。ビクつきながら、近寄ってディスプレイを見た。非通知だ。
 藤宮は、息をのんだ。
 躊躇しながらも、受話器を取った。恐る恐る耳に当てる。
「あの、はい……」
『ちょっと! お宅いい加減にしてくださいよ! 居ることは分かってるんですからね! どういうことですか!』
「は、はぁ?」