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生きてるって素ン晴らしい!

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 名乗る暇もなく、野太い声で捲し立てられた。藤宮は心臓が飛び出しそうなほどビクつく。
『カーテンなんか閉めたことないでしょう! あと変な札! 困るんですよ、そういうことされたら』
「ど……どちらさまですか?」
『そんなのどうだっていいでしょう! それより──』
 心臓がバクバクと鳴り、頭がグラグラする。藤宮は勇気を振り絞って言葉を吐き出した。
「お、俺は関係ありませんから!」
 まだ言いつのる声を無視して、受話器を置いた。膝が震えて、全身から汗が吹き出す。なぜだか、押し付けた受話器からなかなか手が離せなかった。
 不意に、インターホンの呼び鈴が鳴った。
「ぅぅわぁっ!」
 藤宮は、驚きのあまり腰が抜けた。ピンポンという音から逃げるように両耳を塞いで、玄関から遠ざかろうともがく。呼び鈴はまるで追い詰めようとするかのように、何度も何度も鳴り続く。
「ただーいまー」
 聞き慣れた間抜けな声に、藤宮の力と緊張が抜けた。
 玄関横の小窓を少し開けると、確かに影山が立っている。
「なんだよ、鍵もってるだろ」
「だってお前変なお札貼ってるんだもん。お前に開けてもらわなくちゃ入れない」
「?」
 意味不明と思いつつ、藤宮は鍵を外し扉を開けてやった。
 コンビニ袋を下げて入ってきた影山の、機嫌いい顔が、一歩で歪む。
「うわっ! 暑っ! なんだよこの部屋〜」
 文句を言われるとは思ったが、藤宮は几帳面に窓も扉も鍵まで閉めなおした。
「外から入れなくするんだよ。窓から何か飛び込んできて死ぬとかイヤだからな」
「そんなマンガみたいなこと……お前ならあるかもな」
 杞憂を否定されないならされないで、藤宮は凹む。そんな様子にはまったく興味を示さず、影山は冷蔵庫に買ってきたモノをしまっている。
「あー、すまんすまん、辻占いは見つからなかった」
 アテにしていたわけじゃないから、藤宮もこれはダメージない。
「代わりにホレ、これやるから」
 コンビニ袋の底から、何かを差し出す。それは、薄汚れた小さな交通安全のお守りだった。いかにも小学生のランドセルに下がっているようなものだ。
「道ばたに落ちてた」
「気持ち悪いだけだよ!」
「失礼だな、一応お守りだからいいだろ。トラック突っ込んできても助かるかもしんねーじゃん」
 どんな状況でアパートの三階にトラックが飛び込んでくるんだ。