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生きてるって素ン晴らしい!

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「今、仕送り前でそれだけしか口座になかったんだよ。だから、それでなんとか……せめて残りは後払いとかに頼めないかって……」
「ふざけんな! テメーの命をケチるんじゃねーよ!」
 財布を取り戻そうとすがる藤宮を、影山は蹴り倒した。そして中の紙幣だけを抜いて、財布を投げ返す。
「俺も行く!」
「ばか言うな! お前と一緒に歩けるか、俺が怪我したらどうすんだ! アブねぇだろ」
「だって……」
 藤宮自身、さっき外で遭った危険の数々を思い出す。それでも、と、思う。
「……一人にしないでくれよ」
「藤宮……」
 藤宮の不安をなだめるように、影山は微笑った。
「安心しろ。ちゃんと、きのこの山もらってきてやる」
「やっぱりパチスロか!」
「はははー。俺に金を渡したお前が悪い! どうせ死にゃあ六文銭しか持ってけねー、気にすんな」
 玄関のサンダルを引っ掛けて、影山は逃げるようにドアを開ける。
「あ、そうそう。電話は無闇に取るなよ。クレジット会社が最近うるせーんだよ。三ヶ月やそこら返さねーくらいでガタガタ言いやがって」
「返せよ! つーか借りんな!」
「ったく、人を浪費家みたいに。俺は自分に投資してんだよ!」
 捨て台詞を残して、影山は出て行った。そんなに激しくしたつもりはないのだが、アパート廊下の手すりがビリビリ震えている。
 暮れかけて青灰とオレンジに縁取られた雲を仰いで、溜息がわりに煙を吐いた。
「あーあ、世知辛いねぇ」
 甲高い足音を響かせて、階段を下りていった。


 その足音を聞きながら。
 藤宮は、畳に汗の雫を落とし、深く溜息をつく。
「なんで俺、あんな奴居座らせてるんだろ……」
 今更ながら、自分でも不思議に思う。が、考えてはいけない気がして、頭を振った。
 夕立の前兆のような湿った風が、吹き込んできた。涼しくはなるが、身体にまとわりつくようでぞっとしない。
「風が強くなってきたな……」
 中身のなくなった財布を、カバンに戻す。ふと、中にお札が入っていることに気づいた。縦長の短冊に、達筆で判読できない文字が書いてある。覚えがないが、もしかして件の辻占い師がねじ込んでいたのであろうか。