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生きてるって素ン晴らしい!

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「気にするな。人間、生まれたからには必ず死ぬ。貧乏人も金持ちも善人も悪党もイケメンも童貞もメンヘラも、誰にだって公平に死は訪れる。お前だけが特別不幸なんじゃない」
 とりあえず、影山は話をあわせておくことにした。今確実に言えることは、人間が死ぬってことだけだ。
「俺の人生……、なんにも面白いことなんかなかったのに……。これからだって信じてたのに……」
 膝をかかえ背中を丸めて、藤宮はますます部屋の隅へと寄っていく。その肩を、影山はやさしくたたいてやる。
「そう落ち込むな。童貞のまま死ぬのは恥ずかしいことじゃない。それに、童貞のまま死んだら二次元の世界に行って好きな嫁と結婚できるかもしれんぞ」
「本当?」
 希望の星を宿した瞳で振り返る。影山は、本当にこいつ死ねばいいのに、と思った。
「まぁな。三十万ケチって死のうが、二浪して滑り止めで妥協しようが、お前が選んだ人生だ。俺に言うことは何もない」
「人の進路はほっといてくれよ。それより、本当に二次元のよ──」
 ピュアにすがる目をチョキでふさぎたかったが、影山はかろうじて耐えた。耐えてグーで黙らせる。
「それはもういい。今できることを考えようぜ」
「か、影山……」
 壁に強く打ち付けられた額をかばい、藤宮がうずくまっている。影山はその肩を強引に抱え上げた。
「壷、話によっちゃ買うつもりだったんだろ」
「……」
 ふ、と、影山が微笑んだ。そして、手を出す。
「その金、出せよ」
「お前が買ってきてくれるの」
 藤宮は潤んだ瞳で、微笑を返す。そしてぎゅっと、差し出された手を握った。それを、影山は振りほどく。
「そんなわけねーだろ、どこにいるかもわかんねーのに。俺が投資して有効活用してやるから出せって言ってるんだ。貧乏学生だと思ってたら、意外とキャッシュ持ってんじゃねーか」
「投資って! どうせパチスロか競馬だろ! 戻ってきたことないじゃないか!」
「こまけぇこたぁいいんだよ! なにも俺に投資しろなんて言ってねぇ! まりんちゃんに貢げ!」
「最悪だよ!」
「いいから出せ!」
 最後には、半ば強引にカバンから財布を強奪されてしまった。札入れを開き、中を暴く。
「なんだコレ、漱石しか入ってねぇじゃねーか! 壷は三十万だろ」