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生きてるって素ン晴らしい!

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「……いるから……。安心しろ」
 汗でしっとりした頭を、撫でてやる。
「どこにもいかねーよ」
 行きたくても行けないからな。
 何か感情の糸でも切れたのか。藤宮はそのまま、離れなかった。
「死にたくない……。死にたくないよ……」
 あやすように肩を叩きながら、影山は小さなため息をつく。
「生きてやりたいことあるわけでもないんだろ?」
 グスグスと鼻を鳴らして、藤宮が言葉を搾り出す。
「……あ……アニメの続き、みたい……」
「…………」
「わかってるよ、俺なんか……生きてたって誰も喜ばないって……。
 でも、いやだ……。好かれなくても、嫌われてもいい……。生きてたいよぉ……」
「──みんなそう言うのさ」
 蒸れる室温と、薄い酸素の中で。ありえなく抱き合ったまま、影山は藤宮の頭を撫で続けていた。いつの間にか懐中電灯の灯りは消え、暗い部屋には藤宮のすすり泣く声だけが響く。窓も、静かなものだった。
 段々と朧気になる思考の中、影山は独特の心地よさにも浸る。
(あー…………。やっぱいい磁場だよなーコイツ……。でも暑い……死にそう……でもキモチイイ……でも死にそう……)
 もう、自分の生死までどうでもいいような気持ちになって、まぶたが落ちてくる。快と不快が地味にせめぎあって、時間さえ溶けだしているような錯覚を覚えた。


 丑三つ時を過ぎて、外ではいよいよのっぴきならない事態となっていた。死にたての魂はどんどん増えるし、夜明けは近づくしで、死者を送るいわゆる死神諸氏は途方に暮れる。特にこの死者の道を管理している死神は、ため息をついた。
「困ったなぁ。厄病神の旦那はあてになんないし」
 つまらない除霊札でも、住人自身で隙なく貼られてしまっては、外部からはどうしようもない。
「どうします?先輩。このままじゃ、せっかく連れてきた連中、浮遊霊になっちゃいますよ」
「それも不味いしなぁ」
 格下の死神に問われて、集まった死者の群れを見渡す。厳密ではないが、やはり通行期限というものはある。それを過ぎてしまうと、現世への未練が強まるばかりで、余計に成仏がしにくくなってしまう。人の形を保っている間にあの世にいかなければ、転生もままならない。
「ちょっとーいつまで待たせるの?」