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生きてるって素ン晴らしい!

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 その光景が、藤宮には何の問題もなく目に浮かぶ。
「だから安心して成仏しろよ。大丈夫、俺がお前の分も精一杯生きるからな」
 あぁ。こんなにも、嬉しくない励ましがあるだろうか。
「そういうわけで、窓開けようぜ」
 そう、実際かなり限界に近く暑かった。
「俺に死ねって言うのか!」
「いや、多分、別に死なないと思うけど」
「適当なこと言って、自分だけ助かるつもりなんだろ。今そう言ってたじゃないか」
 今すぐなんて言ってないじゃんとかなんとか、影山がモグモグ呟く。
「このままじゃ、暑さで二人とも死ぬだろ」
「どうせ俺は死ぬんだ」
 心中かよと、影山は顔を歪めた。最早彼には、藤宮の生死はどうでもいい、ただこの暑さから開放されたい。いや、最初から生死はどうでもよかった。
「だいたい、暑いのってお前がいるからなのもあるんじゃないのか? 嫌なら出て行けばいいじゃないか」
 藤宮が、やっと、もっともなことに気付く。ここまで人をバカにしておいて、生死もどうでもいいと言い切る影山に、ここに居る理由なんてないじゃないか、と。
 滴り落ちる汗を拭いながら、影山も視線を逸らさなかった。
「──いいのか?」
「…………」
 影山の、冷たいけれど、嘘のない瞳。その視線から藤宮は逃れ、また合わせる。
 そうだ、と、気付く。
 影山は酷い奴だけど、厄病神だけど。いつでも俺にちゃんと視線を合わせてくれてた。俺を見て話してくれていた。そして今──。
 ふと、影山から目線を逸らす。まるで初めてそうされるように、藤宮はドキリとした。影山が無言のまま、ゴロ寝から起き上がり、背を向ける。
「やっぱり駄目だ! 友達なんだろ! ここにいてくれよぉ!」
 藤宮は、咄嗟にタックルして押し倒した。
「保険金なんかやるから…………。一人にしないでくれよぉ……」
 暑苦しいことも忘れて、抱きついたまま懇願した。涙が出て、それ以上言葉にならなかった。
「…………」
 影山の、ただでさえ汗まみれのTシャツに、涙と鼻水が滲みる。男に抱きつかれるなど普通なら耐え難い苦痛だし、即殴り飛ばすところなのだが──。子供のように泣きじゃくられガッチリと抱きつかれて、振りほどく力も正直なかった。
 だいいち、窓も玄関も封印されて、そのうえこの場の主にここにいろと命令されては、影山は自分の意志と関係なく縛られてしまう。