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生きてるって素ン晴らしい!

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「まぁアレだ。一応貧乏ってのは一番スタンダードな不幸だろ?」
 できないんかい。
「それにお前が貧乏なのは俺のせいじゃねー。俺はお前にはそういう力は一切使ってないし。お前のあらゆる不幸は元からだ」
 断言されても、全く嬉しくなかった。
「なんで俺のとこにくるんだよ! もっと幸せな奴いるじゃないか!」
「それは俺の勝手だろ」
 影山はちょっとムッとした。そして拳を高く突き上げ、高らかに叫ぶ。
「俺はいつでも、憑きたい奴に憑く! 何者も俺を束縛することはできん!」
「胸はらなくていいよ」
 思いもしない真実が暴露され、しかし事態は何の好転もしない事実に、藤宮はがっくりと肩を落とした。今日何度目かわからない絶望に、畳を濡らす。
「……俺が死ぬのも、お前のせいじゃないのか?」
「いいや、知らんな」
 神と名がつく割にはあまりに無力じゃないか。
「一応神様なんだろ。どうにかしろよ」
「生死は俺の管轄じゃねーし」
 そんなお役所仕事な話があるもんかと、憤る。ふと、最近のある出来事を思い出した。
「こないだ、何か契約書みたいなのに名前かかせただろ! 判子も! あれなんだよ、魂とか契約とかかよ」
 一瞬考えた影山は、あぁと手を打った。
「はっはは、まっさかー。俺そういうことしねーし。アレは生命保険会社の書類だよ。お前にかけた二億ほど、受取人を俺にしますって」
「あーなんだ」
 オカルトな契約ではないと判明し、互いに安心する。が、そういう問題ではないのだった。
「なんでそんなの勝手に!」
 抗議など、何を今さらと笑い飛ばされる。
 藤宮は、惨めだった。懐中電灯を蓄電するためにレバーを回す手に、涙が落ちる。
「お、俺は……。お前のこと友達だって思ってたのに……。お前が俺を友達だって……言ってくれて……嬉しかったのに……」
「藤宮……」
 唇を噛んで蓄電する藤宮の、震える背に、影山はそっと手をかけた。
「なに言ってるんだ。俺達友達だろ? 今でもそれはかわらねーよ。いつまでも、お前のことを大事に思ってるぜ」
 今まで聞いたことがないような、優しい声だった。
「──ただ、俺は友情を形のあるものに残しておきたいんだ。
 これから先、キャバクラやパチスロでお前の残してくれた金を使うたびに、思い出すんだ。今の俺があるのはお前のおかげ。あぁ、あいつイイ奴だったな──なんて」