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生きてるって素ン晴らしい!

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 暑さだけではない汗が、藤宮の背中を流れる。動悸が激しくなり、頭の中でフライパンを叩くような衝撃が響く。口の中まで渇いて、言葉が出てこなかった。
「……じゃ、じゃあ──」
 なぜか懐中電灯をギュッと握りしめて、声を搾り出す。
「俺が不細工なのも、頭悪いのも、もてないのも、ついてないのも、貧乏なのも、バカにされてばっかりなのも、全部──お前のせい?」
「そんなわけあるか」
 即答で否定された。
「俺はお前には何にもしてねーよ。だいたい考えてみろ。お前、俺と会う前は何かいいことあったか?
 お前は生まれたときからブサメンで偏差値低くて地味でトロくてオタクの愚図だっただろーが。
 お前の人生がぱっとしないのはお前のせいで、俺は関係ねーよ」
 端的に、そして余す所なくコンプレックスを抉られて、藤宮は畳に突っ伏して凹んだ。鬱が重力に作用するなら、確実に地下にまでめり込んでいただろう。もちろん、影山がそんなことを気に留めることはない。ただ、ふとその表情が和らいだ。
「だがまぁ、そうだなぁ──」
 素直な微笑を浮かべ、少し照れるように顔を触りながら、言葉を続ける。
「だからこそ、お前に惹かれたていうか……。お前に会って、俺は目が覚めたよ。
 いっぱしの厄病神として、世の中の不幸を背負って立ってるような気持ちでいたけど……。
 ああ、そんなのは思い上がりだったって。俺がいなくったって、お前みたいに立派に冴えないつまらない人生を送ってる奴がいるんだってことに気付いて。
 まだまだ世界は広い。それに比べたら、俺ってなんてちっちぇえ存在なんだ、ってな──」
「遠い目で言うな!」
 まるでいい話のように聞こえる侮辱に、藤宮はなお絶望した。
「なんてことだ……。貧乏神なんかに取り憑かれてたなんて……」
「厄病神っつってるだろ。あんな下衆な奴らと一緒にすんな」
「似たようなもんだろ」
「全然違う!」
 よほどプライドを傷つけられたのだろうか。影山はムキになって身を乗り出した。
「いいか、あいつら貧乏神はその名の通り、ただ貧乏にするだけだ。だが厄病神はそれだけじゃねぇ。もう一段階上の、経済状態だけじゃない、金ではどうにもならない包括的な不幸を扱ってるんだ。不幸の次元が違うんだよ」
「──じゃあ、せめて金持ちにしてくれよ。同じ不幸なら金あるほうがいいや」
「……」
 両腕を組み、体を引く。