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生きてるって素ン晴らしい!

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「だからこそ、死ぬなら若い内ってもんだぜ?」
 挑発するような目で、影山が続ける。
「どんな無能な穀潰しだって、死んだら惜しまれるもんだ。若けりゃ若いほど。『まだ早すぎる、もったいない』なんて無責任に惜しまれるんだ。その先の人生だって、たいして変わるもんじゃないのにな」
「う、うるさい……、黙れ」
 藤宮の声が、震えていた。
「俺はイヤだ! 死ぬなんて!」
 感情が、堰を切ってほとばしる。
「確かに俺は頭も悪いし取り柄もないし役にも立たないかもしれないけど……、でも、死ななきゃならないような人間じゃない!」
 顔を上げて、影山と視線が合う。心を動かさない風情に、先に目を逸らしてしまった。
「……と、思う。多分」
「多分かよ」
 ガッカリ感を含んだ声に、藤宮は唇を噛む。
「なんで俺なんだよ!」
 今まで押し殺してきた憤りが溢れ出る。
「俺より悪い奴いっぱいいるだろ! 人殺したり、騙したり、傷つけたりしてる奴! いくらでも! なんでそういう奴から死なないんだよ!」
「悪い順に死ぬ訳じゃないからな」
 また藤宮は顔を上げる。目が合っても、今度は逸らさなかった。
「言っただろ? 死は平等だって」
「そんな平等あるかよ!」
「平等ってのはシビアなんだよ」
 影山が、ニヤリと笑う。
「情状酌量の余地もないのが平等。お前ら人間は、考えないで済むから楽なもんだ。だから平等大好きなんだろ?」
「なんだよその言い方! お前は悪魔かよ!」
「あんな意地汚い奴らと一緒にすんなよ。あいつらつまんねー契約なんぞで、役にたたねー魂なんぞ集めて悦にいってやがる」
 唾棄するように、影山が言った。
「俺はもっと上等さ。見返りなんか求めないからな」
 影山の不思議な物言いは、今に始まったことではない。けれど。懐中電灯の淡い光に照らされた顔の、異質な冷たさが、藤宮の胸をざわつかせる。何か、それを言い当てるようなイメージがあったのではないかと、自分の記憶を探る。その時、この騒動の大元だった出来事と言葉を思い出した。あの、辻占い師が言った、死の理由を──。
 藤宮は、乾いた唇を震わせる。
「…………や……厄病神……?」
 下からの照明に浮かび上がる、どこか浮世離れしたような端正な顔。その怜悧な視線のままで、ゆっくりと口角が上がった。
「あの辻占い師、インチキ商売してる割にはイイ線いってるよなぁ」