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生きてるって素ン晴らしい!

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 突然、電気が消えた。藤宮だけが、ひゃっと息が抜けるような声を出す。
「ブレーカー落ちたんだろ」
 影山が冷静に、押入から手探りでラジオ付懐中電灯を出した。電源が要らない手回し式だ。
「オラオラオラオラオラ!」
 壊れんばかりに影山が気合で回す。すぐに、ぽっと淡い光が灯った。互いの顔が浮かび上がる。
「あー疲れた。あとお前やれよ」
 あっさりと、藤宮に押し付けてくる。藤宮は大人しく、レバーを回して光を強くした。回さなくても光が持続するようになって、ブレーカーを確かめる。
 スイッチを切り替えても、電灯もテレビもウンともスンともいわない。
「うちだけじゃなく停電みたいだね」
「しょーがねーな。いっそ寝るか」
「……寝られないよ。もし寝てる間に死んじゃったらどうするんだよ!」
「楽に死ねていーじゃん」
「嫌だ!」
 結局、また座敷で車座になった。懐中電灯の光が弱まると、藤宮が蓄電する。テレビもプレイヤーもパソコンもつけられなくて、ただ二人で黙っていた。相変わらず、窓はガタガタと鳴っている。それでも、さっきよりはマシになっていた。
 携帯をいじっていた影山が、舌打ちして手放す。どうやらバッテリーが切れたらしい。
 いつもなら、両隣からなんだかんだと雑音が聞こえてくるものだが、今夜はそれもない。風の音以外は、静かな夜だった。
 淀んで熱気をこもらせた空気に、汗が落ちる。あまり汗をかかない影山でさえ、タオルを手にしていた。酸素が薄くなっているようで、思考がどんどんと偏っていく。
「…………死ぬのって……、どんなのかな。苦しいのかな」
「イロイロだろ」
 影山のぞんざいな返事に、もっともだと黙る。今までテレビや映画でみた死の場面を思い出し、自分になぞらえてみる。
「もう、俺ダメかも……。頭痛くなってきた……」
「気のせいだ」
「すっごい汗出るし」
「暑いからだ。窓開けろ」
「嫌だ!」
 もう何度目か分からない会話を繰り返す。うんざりしているのはお互い様だった。
 しかし、そんなことを考慮する義理など、影山は感じていなかった。
「まー。死ぬのもそう悪くねーよ。何しろ、死んだら悪口言われないし」
「そこまで嫌われてないよ!」
 藤宮の反論に、なるほどと影山は考え直す。
「そうだな。お前って、嫌われるほどの存在感もないよな」
 かえって傷口を広げられた。