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生きてるって素ン晴らしい!

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 あまりの唐突さに、藤宮が呆れる。けれど構わず影山は押入を勝手に開けて段ボールを漁った。どうやら留守中に勝手に収納していたらしい。
「本能に身をまかせてりゃ一晩くらいすぐだって」
 キラキラの笑顔で、黒いVHSビデオカセットを十数本も取り出して積む。隠し持っていたその量に、藤宮はまた呆れた。
「もっと早く出せよ……」
 今ほど、貧乏でラッキーだったことはないかもしれない。藤宮の持っているテレビは、テレビデオだった。
 まったくもぅ……などと言いながらも、胸弾ませて、藤宮はビデオカセットを差し込んだ。
 ガシャンガシャンとメカっぽい音を立てて、デッキが動き出す。二人は息をのんで、小さなブラウン管に見入った。
 暴風雨の如く、窓は鳴り続いていた。
 期待を裏切らず、ビデオは前置きもそこそこに、イケナイコトが始まってしまう。一応順序だてて、なかなか露出はしない(してもボカシで藤宮には正体は分からないが)。アンアンとありがちなあえぎ声が、暑い部屋に響く。それにつれて、藤宮の顔色は沈み、汗が流れ落ちた。
 ついには、俯いて畳に伏せてしまう。
「────怖くて全然勃たねーよぉぉぉぉぉ」
「妙なところで繊細な奴」
 とうにダレて寝転がっている影山が、面倒そうにリモコンで音量を上げる。どうも風の音が激しくてせっかくの声が聞こえない。音量数値を上げると少しは聞こえるが、すぐにまた激しい風音に消されてしまう。
 藤宮は、青ざめていた。
「なんか……、心なしか風が強くなってるような……。あと…………、なんか、風じゃない……、怖い声っぽいのが……」
 そう。もはや台風並みの暴風雨とも言い切れない怒号が、どうもサッシを震わせているのだ。その事実を認めるのは、藤宮にしては勇気のあることだと、影山は思う。
「女優が素人ブスばっかなのがご不満なのかもな」
「誰かいるみたいな言い方すんなよ!」
 最初に言い出したのは誰なんだか。影山は頭をかいて伸びをした。彼はすでにもう観たことのあるオカズだったので、飽きていたのは事実だ。
「じゃーやっぱり拾ったBLCDでもかけるか」
「そんなもんまで拾ってくるな!」
「なかなか笑えていいんだよ」
 また押入から紙袋を出してくる。十数枚は入っているそこから、無造作に出して藤宮に渡した。彼も律儀にそれをプレイヤーにセットする。