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生きてるって素ン晴らしい!

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 受話器の向こうで、父が母を呼んでいる声がする。引越してから飼い始めた犬が吠えている。
『早く言いなさい』
「…………な、……なんでもない。いってらっしゃい」
『変な子ねぇ』
 それで、電話は切れてしまった。
「……」
 受話器を置いたまま、藤宮は俯いて動けなかった。
「おじいちゃんより僕が死にそうなんだから助けてママ!て言えばよかったのに」
「そそそんなの言えるわけないだろ」
 茶化されて、やっと顔を上げることができた。
「それに……。俺なんかより、じいちゃんの方が大変なんだから……」
 力なく、柱にもたれて腰をおろす。
「そうだなー。爺が死んだら、血みどろの遺産相続争いが始まるからな」
「……」
 下世話だが、現実的だとも思う。
「遺産なんかあるのかな」
「年寄りは結構ためてるぞ」
「金は……多分ないよ」
 藤宮は、件の祖父を思い出していた。最後に会ったのは、もう三年ほども前だろうか。その頃はまだカクシャクとしていたものだった。
「俺のじいちゃん、なんか伝統工芸の第一人者っていうか……、もう伝承受け継いでる最後の一人とかって職人なんだ」
「すげーじゃん」
「……どうかな……。地元のお寺に納めるだけの、数なんか知れてる蝋燭の職人でさ。一本一本手で作るんだけど、金なんか全然たいしたことないんだ。ちょっとの補助金もらってるらしいけど、苦労の割にいい暮らしなんか全然できないんだ。だから誰も継がないし……遺産なんかないよ」
「へー。やっぱすげーじゃん。爺さん死んだら、そこらへんの仏さん困るんじゃねーの?」
 影山の言葉は、藤宮には意外だった。そんなことは、考えたこともなかった。
「……そうかもな……」
「お前が継いでやれば? どうせやりたいことなんかないんだろ」
 あまりの無責任な提案に、藤宮は目を丸くした。
「ば……、馬鹿なこと言うなよ! すんげーきついんだぞ! それに全然金にならないんだ! 田舎に住まなくちゃいけないし! テレビのチャンネルなんか3つしかないんだぞ!」
「衛星とケーブルつなげばいいだろ」
 どうせアニメしか観ないんだろと付け足されて、否定できない。
「それに……ほんときついんだ。俺になんかできっこない」
 影山が、冷めた目をまたジャンプに戻した。ごろりと横になり、タバコに火をつける。
「そうだな。お前、どうせ死ぬし」
「……」