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生きてるって素ン晴らしい!

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 食べた後片付けは、いつも藤宮の仕事だ。影山はまたジャンプを眺めながら、まだビールを飲んでいる。結局、彼が藤宮にすすめてくれたのは二本だけだった。
「き、今日死ぬって言われたんだから、十二時まで生きてたらいいんだよな……」
「へー」
「へーじゃないよ! そういうもんじゃないのか?」
「知るかよ。お前がそう思うんだったらそうなんじゃねーの?」
 全く興味なさそうに、マンガから顔を上げずに返事をする。
「でもまー、夜明け前に外出てとり殺された昔話とかあるよな」
 些細な一言が、藤宮の心を揺るがす。
「……やっぱり、朝まで待った方が確実かな」
「好きにしろ」
 それきり影山はまたマンガを読み始めて、会話は途絶えてしまった。
 藤宮は、時計を見る。まだ八時を過ぎたばかりだ。意を決して、電話に近付いた。
「どした? また変な電話かかってくるかもしんねーぞ」
「う、うん……」
 受話線をつなぎ、コンセントを手にとる。差し込むのには、まだ少し迷った。
「でも……。もしかして本当に最期なら……。親くらいには何か言っとかないとなって……」
「お前だけ置いて新築マンション引っ越す親か?」
「う、うるさいな。こっちの方が大学近いからいいんだよ。気楽に独り暮らしできるし」
 勢いに任せて、コンセントを差し込む。その途端、電話が鳴り出した。
 藤宮は飛び上がって驚き、電話と距離を置く。が、勇気を振り絞り、電話に近づいた。表示された番号に安心し、受話器を取る。
「か、母さ──」
『正人? やっと繋がったわ。あんた何回かけたと思ってるの。電話代ちゃんと払ってるの? 安いのでいいから携帯持ちなさいよ』
 慣れた声に名乗る間もなく捲し立てられる。それより、家の電話があるから携帯買うなって言ったのは誰ですか。
「あ、あのさ……」
『あー今それどころじゃないのよ。あのね、藤宮のおじいちゃんがまた危篤なの。ちょっと行ってくるから。あんたもしばらく電話でるようにしなさいね』
「お、おじいちゃんが?」
『もう何度目の危篤かわかんないけどねー。いつまでも暑かったから、いよいよかもしれないし。それじゃタクシーきたから。またね』
「あ、母さん、待って! 俺……」
『なぁに?』
 懐かしい顔が頭にちらついて、胸がいっぱいになってしまった。
「………………俺……」