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生きてるって素ン晴らしい!

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 読みかけたジャンプを閉じて、藤宮が無邪気に喜ぶ。
「最後の晩餐になるかもしんねーからな」
「……」
「ホラ、ビールも飲め。発泡酒じゃねーぞ」
「わぁー」
 気前のいい影山の大盤振る舞いに、藤宮は手を叩いた。と同時に、認めたくない現実に思い至る。
(でも、これ絶対俺の金だよな……)
「あんだ? その目は……。もしかしてお前、俺がお前から巻き上げた金で買ってきたとか思ってんじゃないだろーな。馬鹿にすんなよ! 俺にはな、俺に貢ぎたくてしょうがねー女の一人や二人や三人、いるんだよ」
 その剣幕に、藤宮は思わず、ごめんと謝ってしまった。
 缶ビールで乾杯する。暑い部屋だから、冷えたビールの喉越しは最高だった。
「かーっ! たまんねーな!」
 心の底から美味そうに、影山が吠えた。その様子と実際の美味さに、藤宮も顔をほころばせる。元がどうであれ、これは影山の驕りだ。人に奢ってもらうなんて初めてかもしれないし、ビールも寿司も最高に美味しい気がした。たとえ、カッパ巻や新子巻を押し付けられていても。
「ホラ、俺のイクラも食えよ。ハマチも」
「え……、いいのか?」
「いーんだよ。遠慮すんな」
 影山がイクラとハマチを、自分のパックから藤宮のパックに置く。さっきカッパ巻と引換にとマグロを取っていった男とは思えない、優しい微笑だった。
「ここの、安モンだから口にあわねーんだよ」
「……」
 藤宮のガッカリになど構いもせず、影山はまた冷蔵庫から缶ビールを出した。そして、実に美味そうに飲む。まるでテレビのビールのCMみたいだと、藤宮は思う。
「うんめー!」
「良かったな」
「おぅ! やっぱさ、お前と飲む酒は美味いな!」
 影山にすれば、何気ない一言だったかもしれない。
 けれど。それが軽い一言であるほど、藤宮には胸に響いた。今まで散々、つまらない奴と罵らてきたけれど。今の言葉で、やっぱり影山といて良かったと、胸がいっぱいになった。
「あ、エビは置いとけよ」
「……う、うん……」
 ちょっとしぼんだ。
 海苔のしんなりしたイクラの軍艦巻を、それでも美味しそうに食べる藤宮を、影山はビールを飲みながら見て思う。
 やっぱり、人の不幸は最高の肴だ、と。