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生きてるって素ン晴らしい!

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「そ、それより影山! お前に借金取りから電話あったんだぞ! いくら踏み倒してるんだよ」
「え……」
 影山の、アイスの袋を開ける手が止まった。
「俺はとばっちりはごめんだぞ」
「……」
 袋から出したアイスキャンデーを口に運びつつ、表情は固い。いつも飄々としている影山にしては珍しい焦りが滲んでいて、藤宮も緊張する。
「そんな電話、かかってくるはずねーよ」
「かかってきたよ! いない振りしても無駄だって!」
 嘘ではないと主張されて、影山は黙った。そして、電話のコードとコンセントを指差す。視線の先のそれは、抜けていた。
 藤宮の背筋を寒気が走り、全身に鳥肌がたつ。他人事のように影山は言った。
「だから電話取るなって言ったのに」
「じゃ……じゃああの電話……。なんだったんだよ!」
「しらねー。何て言ってたんだよ」
「……カーテン開けろって……」
「開けてやったら?」
「よけいいやだ!」
「関係ねぇと思うけどなー。まぁお前の納得するようにすりゃいいさ。お前の部屋だし」
 あっさりと言って、影山は一番いい座布団を敷いて壁にもたれ座り、ジャンプを開く。
「よくこの状況でジャンプ読めるな!」
「俺が死ぬんじゃないもーん」
 顔も上げずに答えた。ページをめくり、好きな連載を探すのに余念がない。あまりにも他人事の風情に、藤宮は情けなくなった。
「と、友達なんじゃないのかよ!」
 そんなつもりはなかったのに、語尾が震えてしまった。
 影山が、顔を上げる。目が合うと、つい、そらしてしまった。鼻で笑われたのがわかる。
「大事な大事な友達だぜ? お互いにな。だからその友達の、ガリガリ君食べつつジャンプ読む至福の時を邪魔するもんじゃねーよな?」
 藤宮には、何も言えなかった。ただ、その場に座り込み、俯いたままでいた。どのみち、狭い部屋では自分の身の置き場は限られていた。
 組み替えた胡座の膝が藤宮の背中に当たりかける。そんな距離感を、影山は残ったキャンデーの棒をねぶると同じに味わう。
(あー……、いい磁場)
 山場の引きの読後感に浸るようなため息が、出た。


 藤宮がジャンプを借りて読み出してすぐ、影山が冷蔵庫からスーパーの袋を出してきた。すぐ斜め前にある安売りで有名なスーパーだ。ちゃぶ台にうやうやしく、プラスチックパックを並べていく。
「ほれ、食え」
「寿司だー」