私のやんごとなき王子様
「小日向、これが担当希望記入用紙だ。前に配ったやつ失くしたって言ってただろ?」
「すっ、すみません」
「おう、もう失くすなよ」
私が頭を下げると同時にクラス中から笑いが漏れる。
そう、あんまり決められないものだから、私は以前もらっていた用紙を失くしてしまっていたのだ。
決められないわ用紙は失くすわ、最悪だぁ。
手渡された用紙を睨んで頭を下げると、先生はぽんぽんと私の頭を軽く叩いて戻って行った。
先生があんまり優しいから、余計につらくなっちゃった。「お前いい加減にしろよ!」くらい言ってくれたら、こっちも「じゃあどこでもいい!」とかって投げやりに決められそうなのに。
ああっ、駄目駄目! 決められないのを先生の所為にしちゃってるよ。もうホントに最悪だぁ〜。
「はあ……」
「美羽ってば、何気に結構抜けてるよね〜」
可笑しそうに笑いながらやってきたさなぎを恨めしそうに睨むと、私はもう一度ため息をついた。
「はあ〜」
作品名:私のやんごとなき王子様 作家名:有馬音文