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私のやんごとなき王子様

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 ふいに鳴り響いたキーンコーンというチャイムの音が、私の意識を覚醒させた。
 いっけない! 早く教室に行かないと、遅刻扱いになっちゃう!
 上履きに履き替えると、急いで教室へと向かった。


 慌てて教室に入り席に着くと、前の方の席からさなぎがニヤニヤした笑みを向けてきた。
 もうっ、お気楽なんだからっ。
 とりあえずまだ先生が来ていない事に安堵して、私はさっきの潤君の言葉をもう一度思い起こす。


『小日向先輩も、舞台に立ちませんか?!』


 私なんか、どう考えたって無理なのに――
 私は明後日が担当希望の締め切りだというのに、未だそれすら決めれていないのに。
 自然と俯く私の耳に、明るい声が飛び込んできた。

「おはよー、お前ら席着けよー」

 聞きなれた響きが教室の入り口から飛んできて、私ははっと顔を上げた。
 担任の真壁(まかべ)先生が挨拶をしながら教壇に立つ。
 背の高い先生が立つと、黒板が小さく見えてなんだか滑稽だな。なんてどうでもいいことを考える。

「よおし、HR始めるぞー! 日直、号令」
「起立!」

 ガタガタと一斉に立ち上がるちょっと耳障りな音。

「礼!」
「おはようございまーす!」
「着席!」

 元気よく頭を下げるクラスメートの中、私はなんだか既に疲れていた。ゆっくり椅子に腰を下ろし、回ってきたプリントを後ろの席に回す。

「よし、プリント回ったかー?」

 相変わらず元気な人だなあ。とその笑顔に感心しながら、私はぼんやりと先生から伝えられる連絡事項を聞いていた。
 わっ?
 突然先生と目が合って、私は気まずくなって下を向く。配られたプリントは演劇祭の合宿に関するものだ。
 きっとまだ担当を決めていない私の事を案じてるんだろうな。
 どうしようかなあ……。
 ぼんやりと手元のプリントを眺めていると、いつの間にかHRが終わろうとしていた。

 ちょっと、私ってばどんだけ記憶飛ばしてるの!?
 慌てて辺りを見回すと、いつの間にか目の前に先生が立っていたまたびっくりする。

「せ、先生っ、あのですねっ……」

 思わず立ち上がり、何も言われていないのに一人言い訳がましい言葉を言おうとするけど、口がうまくまめらない。
 情けない――