私のやんごとなき王子様
「小日向さんは演劇祭、何を担当なさるの?」
「ええっと……演劇祭は……まだ……決めれてなくて」
「そう。演劇祭にはわたくしも玲君も参加致します。メディアの方も多く取材に来られますわ。あなたも、悔いのないよう精進遊ばせ」
そう言うと亜里沙様は綺麗に微笑んで、私を横切り校舎へと向かった。
その後をインプリンティングされた雛のように、とりまき達が追っていく。とりまき達は私の横を通る時に、悪態をついたり睨みつけたりしてきた。
「感じ悪ぅ〜〜」
その様子を見て、さなぎが口を尖らせながら呟いた。
「いいよ、さなぎ。私だってびっくりしてるもん」
そう、本当に驚いていた。
だって‘あの’亜里沙様に声をかけて頂くなんて。しかも風名君が私の話をしてる? 私のいない所で? どうして?
その事実がとても意外だった。だって風名君は私にとっても雲の上の人っていうか……。
そんなことを考えている私は、さなぎとの会話にもすっかり上の空で、気づけば下駄箱、無意識のうちに右手には上履きを持っていた。
作品名:私のやんごとなき王子様 作家名:有馬音文