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私のやんごとなき王子様

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「高校生活最後の演劇祭だから、一所懸命やりたいんだけどね。でもどこのお手伝いをすれば自分が皆の役に立てるか分かんなくて」
「小日向さんならどこででも皆の役に立つよ」
「え? そ、そうかな? 現段階で利根君に仕事させてるような人間だよ?」
「ふふっ、でも佐和山さんを待つ間は一人でやってたんでしょ?」
「それは、まあ……」

 なんだか利根君に褒められるとすごく嬉しい。そんな風に言ってくれるのはきっと利根君が優しいからなんだけど、それでもやっぱりこうやって面と向かって言われて嬉しいって思えるのは、利根君の言葉がお世辞じゃないからだと思う。
 本当に見た目も心も美しいなんて、反則だよな。

「ねえ、小日向さん」
「なに?」
「もしきめられないんなら、俺の手伝いをしてくれないかな?」
「え? 利根君のお手伝い?」

 急な申し出に、私はフラスコを片付ける手を止めて利根君を振り返る。
 利根君はもう全部チェックし終えたらしく、ノートを閉じて優雅な動きで机の上に置くと私に向かって微笑んだ。
 女の私が言うのもなんだけど、そこらの女の子よりも遥かに綺麗な顔をしている。

「そう、俺の手伝い。舞台衣装とか小物を作る小道具なんだけど、小日向さんに手伝って欲しいんだ」
「楽しそうだけど、私に出来るかな?」

 作業を再開しながら衣装をミシンで縫う様子を想像してみる。
 裁縫は割りと好きな方だし、小道具を作るのもなんだか楽しそうだ。

「俺がどうしてここに来たか、分からない?」

 机にもたれかかってそう言った利根君の言葉に、私は再び気がついた。

「あ、そう言えば! 先生に用だった?」
「――本当に小日向さんって、面白い人だね」
「えっ?」
「俺は君を探してたんだよ」
「……私?」

 いまいち利根君の言っている意味が理解出来ないけど、どうやら利根君は私に用があったらしい。

「そう。演劇祭の仕事を一緒にして欲しいって、お願いがしたくて探してたんだ。さっき職員室の近くで佐和山さんに会った時にここにいるって教えてもらったから」
「ええっ!? ちょっと待って、どうして私っ!?」

 もう少しでプレパラートをごっそり落としてしまうところだった。