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私のやんごとなき王子様

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 潤君と風名君から衝撃のお誘いを受けて、結局今日一日授業どころじゃなかった。
 数学も物理も英語も現国も世界史も科学も、なーんにも頭になんか入らなかった。

「小日向君」

 自分の席でぼんやりとしていた私は、オレンジ色の光が差し込む教室でクラスメイトの三島秀一君から声をかけられた。
 三島君は生徒会長で、さらには演劇祭の実行委員長。成績は常にトップクラス(とはいっても風名君が殆どトップで、三島君は2位っていう場合が多いんだけど)。運動は苦手だけれど、 彼の統率力や論理的な思考は学園の誰もが一目置いている。
 そんな三島君に声を掛けられたものだから、私は内心冷や汗もの。
 だって……何を言われるかの予想はつくから。

「君はまだ演劇祭の担当を決めていないようだね」

 うっ。ほら、やっぱり。

「締め切りは明後日だぞ。君一人の遅れが全体に繋がる。早く決めるんだ」
「はい……」

 私は思わず敬語になってしまう。三島君は悪い人ではないけれど、正直苦手だ。

「何かやりたい事はないのか?」

 俯いてしまった私に、今度は少しばかり柔らかい声を掛けてくれたけど、相変わらず眼鏡の奥の切れ長の瞳は笑っていない。

「やりたい事……」

 ふと脳裏にお昼の風名君の言葉が蘇る。


『小日向には、俺の相手役のお姫様をやって欲しいんだーーー』


 風名君の声と共に、彼の爽やかな笑顔まで思い出してしまって、私は思わず赤面した。

「小日向君?」

 そんな私を不審そうな目で見つめる三島君。いけない、これじゃあ完全にアブナイ子だわ。

「なっ、なんでもないの」

 私は慌てて両手をバタバタと振った。

「ならいいが……」

 何とか誤魔化せたみたい。とはいえ本当に演劇祭どうしよう。
 風名君が私に声を掛けてくれた事は嬉しい。でも私なんかがそんな大役を出来るとも思えない。第一、お姫様は亜里沙様がするのに決まってる。し、誰もがそれを望んでいるだろう。

「はーーーっ」

 煮え切らない私に、三島君が大きなため息をついた。

「やることが決まっていないのなら、実行委員に入るといい。はっきり言って人手不足だ。君が来てくれれば助かる」