ゆめくい
×××
死体処理は流石に道端では出来ない。死に体を抱えて何処かへ移動しようとその胃液に塗れた身体を担ぎ上げる。その刹那、地面に何かが落ちた。首を傾いで眺めてみればどうやらそれは学生証のようで、身分を証明するもの。置いていくわけには行かず拾い上げて唖然とした。ファッキンジーザス。
「チッ……」
生徒手帳をコートのポケットにぶち込み、死に体を肩に担ぎながら歩いて数歩の九条真希と九条真衣の自宅に上がりこんだ。十時ではまだ起きていたのだろう、おそらく両親と思しき男女がこちらの侵入に悲鳴をあげ、更に肩に担いだ『九条真衣』に絶叫した。依頼をしたのはお前たちだろうと喉許まででかかった言葉を飲み込み、あまりにも鬱陶しいので血塗れたナイフでそのまま首を落とした。嗚呼、理由のなき殺人紛いだ。(あえて理由をつけるとしたら、『九条真希』の監禁だろう)
死に体三つをまとめて居間に置き、屋敷の最奥まで土足で進む。隠されているとしたらそれはきっと、地下か或いは物置だろう。悪戯っ子を懲らしめるにはそうだと、昔から相場は決まっているのだから。
そして読み通り、最奥には地下室があった。深い、三階近くまである。腐敗の臭いが在り、けれど死臭の臭いはしない。明かりのないその箱の中で見つけたのは、凡そ人間とは思えないいたいけな少女の身体。心身ともにストレスが溜まっており、構造している骨組みが見て取れる。抱え上げて地上へ戻し、死に体だらけの中へ放ってトドメを差した。――時に。殺人が救済にも繋がる場合があると謂うが、はたしてその境界線は何処に引かれているのだろうか。実にも滑稽な境界線は。