私の主張
おにぎりサークルの底の知れなさを垣間見恐怖しつつ僕は屈伸をしていた。とりあえず気合いぐらいはいれといた方がいいのかなと思ったのである。
すると誰かが僕の肩をツンツンと叩いてきた。吉川であった。
彼は社会学の授業だけかぶっている程度の何とも言えない知り合いだ。そのわりにやけに馴れ馴れしくて彼と話していると僕は何だか随分彼と仲がよいような錯覚をしてしまう。実際はそんなこと全然ないのだが。
そういうわけで吉川にはとても友人が多かった。サークルとかワークショップとかよくわからないものに3、4つ入ってる様なやつなのだ。勿論茶髪だ。
まさかおにぎりサークルにまで入ってたとは知らなかった。
「おい春!」
吉川はいつもの剽軽な物言いをかなぐり捨てとても険しい顔をして囁いた。
「どうした吉川よ。僕らは今やライバルなのだ。」
「んなこと知ってるよ!…そんなことより何で部長にあんな口の聞きかたしてるんだよ。」
「いつもそうだぞ。」
「…お前…。」
吉川は妙に真っ青になった。何が何だかわからない。俯きながらぶつぶつと呟いている。
「…だからか…?…まさかな…。だとしたら全部こいつのせいじゃないか…。いや、でも一番の被害者は…。」
「吉川。」
変声機。…部長だ。いつのまにか部長が後ろに立っていた。
吉川は「っせんしたー!!」とかすれた悲鳴を上げながらものすごいスピードで逃げていった。
死に物狂いってああいうのを言うんだなぁ。
「春」
「はい!」
「お前は今日何もするな。」
「は…はい…。え?」
部長は僕をじっと見つめた。正確に言えばおにぎりの仮面がしばらく僕の方を向いていた。
「見てろ。」
僕は何のために交通費かけてここに来たのだろうと呆然とする。
部長は僕の頭をボフッとすると戻っていった。
「…つらいぜ…」
まぁ確かに僕は何も習っていないのだ。
でもおにぎりくらいなら握れるぞ。
何か視線を感じたので振り返ると夢ちゃんがすごい顔で僕を睨み付けていた。僕は恐ろしさと悲しみと驚きでパニックになった。一体全体僕が何をしたというのだ。やはり女のこはわけがわからない。怖い。
「…始まるぞ。」
鈴木が僕の肩に手をかける。
この様にして初おにぎり大会は幕を開けた。