私の主張
「お米は回りましたかぁー?」
突如赤ら顔のハンプティダンプティの様な体型のおじさんが現れて言った。
素晴らしいテノールの持ち主で、皆部長が現れた時の様にパッとそっちを向いた。
体育祭の熱気にやられたのか、もともと汗っかきなのかは知らないが、ポンポンとひっきりなしにデコにタオルをあてている。
恐ろしく似合わないジャージに身を包んだ彼はオヤオヤと笑いだした。
「面白い仮面ですなぁ!やる気に溢れておられるようだ。」
その場にいた全てが再び静まりかえった。
この場でお面を被っている人物なんて一人しか知らない。
が、おじさんは何も気にしない。
気にしないで、話し続けている。
どうやら空気が読めないタイプのようである。
僕はこのおじさんは一体誰なのかしらんと思いながら部長を見た。
部長からは冷気が発していた。
ブリザードブリザード!!
「いやはや有難いもんですなぁ。しかぁし少しばかりはりきり過ぎなのでは?ここは一応大学なのですよ。まぁまだ子供のような学生も随分といますがね。ワハハハハ!」
皆呆然と立ちつくしている。
一方の僕はというと慌てふためき転んでいた。
おじさんのふくよかなお腹が僕の顔をキャッチした。
「むっほう」
おじさんはオヤオヤと僕の頭をひっぺがす。
どうせなら女の人の胸がよかったゼ!!…等と思いつつも実際にそんな事態に陥ったらさむぼろがたつだろう。
あ、ちなみにさむぼろとは鳥肌の親戚のようなものである。
あの女性特有のふくらみの裏には何かうさんくさいものが潜んでいるように思えるのだ。
何かはわからないが「残念でしたぁ。あかんべー。」と言われてしまいそうな気がするのだ。ブルブル。
「これはこれは随分と大きな方ですなぁ!よい働きを期待していますよ。」
ふぉっふぉっふぉっとおじさんは笑った。
何もないとこで動揺してこけた男に期待されても困るのである。
おじさんは僕に満足した…のかはよくわからないがそのまま去って行った。
「ふぃーっ危なかったぜ。鈴木よ見たか!部長ブリザードの危機から皆を救った僕の雄姿。」
「あれわざとだったのか?!」
鈴木はそんな馬鹿なという顔で頭を捻りまくっていたが僕はうむうむと頷いて黙っていた。そういうことにしておくのである。
「…まぁいいや。そろそろ試合が始まるぞ。皆透明の手袋はめて!」
鈴木が手袋ボックスを僕に放り投げる。
僕はぽすんぽすんと手袋を引っこ抜きながら皆に配り歩いた。
「…ん?」
僕は見覚えのある人間がちらほらいることに気付いた。
しかも我が大学でである。
「鈴木ー」
「なんだ春。早くしろ。」
「なんで吉河がいるんだ?それに太田も。」
「校内大会だから。」
あ…?
僕はぽかんと口を開ける。
鈴木は舌打ちをしながら僕をどついた。
「だから前も言ったろうが。ここにいるのは皆S大学のサークル部員。全国大会はここで勝ち抜いてからだ。」
僕はボックスを取りおとした。
鈴木が僕にチョップをしたが僕は避ける暇も無かった。
サークル部員、いすぎるだろう。
10組はいるぞ。どうなってんだ。