私の主張
「…知らん、だとう?」
「知らんもんは知らん!っていうか知りようがない。」
鈴木は絶望的な顔になった後、部長をちらりと横目で見た。
「…試合だ。」
部長は低くはっきりと言い放つ。
「…へ」
「試合。来い。会場に急ぐぞ。」
部長はザカザカと歩き始めた。
見た目は歩いていたがそのスピードは自転車並である。
僕には到底追い付けそうもない。
「あのーう…実は僕夜の8時から割のいい肉体労働のバイトが入ってるんですけど…間に合いますかね。」
「試合による。」
「なんてこったい!」
僕は思わず吠えた。
すかさず部長は僕の頭を叩いた。力的には殴った、でもいい。
「いいなぁ春君。部長に突っ込まれて…」
夢ちゃんがちろりと上目使いをしながら口をとがらせた。
なんだろうこの小動物的な生き物は。
僕は出来るだけ彼女から離れる。
「ていうか今の突っ込みだったの?!…あっそういえば鈴木、この部活って交通費出んのか?実は今日の電車代もなかなかバカにならないっていうか…」
「出るわけないだろ。着いたぞ。」
そこは、某体育会系大学の体育祭だった。