私の主張
「ごっごっごっごめんなさい…っ……ん?」
カッと目を開くと見慣れた天井。ところどころひびわれている。
少し視線をずらすと、そこにはぶらんぶらんと揺れる前の住人が置いていったおやすみコード付きの白熱電灯。
そしてハウスダストが溢れていそうなカビた匂い。
「…あれ…」
家だ。
正真正銘僕の部屋だ。
頭をかきつつむくりと起き上がる。
未だ片付いていないダンボールまで全く同じ。僕ん家だ。
(…しかし…)
何してたっけ?僕。
なにやら物凄くおっそろしー夢を見ていた気がする。
確か美女とかあばら屋とか麻殻に目鼻をつけた様な男とかが出てきた気がする。
…あと、おにぎりの怪物とかも。
「チッやっと起きたか」
「…」
…
「…うおうっ!?」
おにっおにっ
おにぎりの怪物が僕の隣に?!!
「あくあくあく悪霊退散!!」
ただでさえ狭い部屋を逃げまとうものの体がでかいため逃げようがない。
おまけにギシギシいいっぱなしで倒壊しそうな勢いだ。
しょうがないからそこらのダンボールを被って応戦する。
おにぎりの怪物は「馬鹿か馬鹿。」などと言いながら僕のおしりをひっぱたいた。すごく痛い。
「うわぁー!ごめんなさいごめんなさいもうしません…!!命ばかりは…!」
僕は自分がどうして謝っているのかわからないまま謝り続ける。
いっそう深くダンボールを被ったらとうとう底がつき抜けて頭が出た。
パニック状態の僕はつき抜けたダンボールを体にはめたまま新たなダンボールを頭に被せようと手をのばした。このままではダンボール男になってしまう。
しかし今度は手をのばした瞬間に頭をはたかれた。
「やめろ馬鹿。煩い。」
「ひぃっ…ん?…あ」
そこでやっと気付く僕。
「…部長…ですか…?」
そうだった。
おにぎりの怪物は部長だった。
じゃあなんで僕の部屋にいるのだと思いつつ恐縮してダンボールをはめたまま正座をする。
部長は何くわぬ顔であぐらをかいていた。
「…えーと…あのー、僕は一体…」
「入部届けだしといたから。」
「あ、それはわざわざ…え?!」
んなっなんだって?!
部長は表情を変えない。(おめんだから。)
僕はショックで呼吸困難の金魚みたくパクパクする。
なんたるこった!
…やめようと思ってたのに!
「ちょっちょっと待ってくださいよ!だいたい僕入部届け書いた覚えないですよ!印鑑とかもいるんじゃないんですか?!」
僕は高校生並の知識で訴える。
そんなばかな!
「捏造した。」
「ねっ?!いつのまに!」
「お前が気絶するからだ。手間賃。」
「手間賃ってそんな!」
僕が嘆いていると部長はすくっと立ち上がりダンボールをあさりだした。
挙げ句アルバムだとかポエムだとか見だす始末だ。本当にやめてくれ。
僕は必死で抑えこむものの部長は結構筋肉質らしくびくともしない。
むしろ僕が部長に飛ばされた。
「痛いっひどいっ」
「『春風そよそよ おなかが減ったね そろそろ10時のおやつだぞ』…」
「やめてー!朗読しないで!それはっ眠かったからっ暇で書いただけなんだっ痛いっ」
僕は再び飛ばされる。
もうアパートが崩壊しそうだ。
「『へいよー さらんらっぷーだよーyoー』…馬鹿?」
「もうやめてくれー!」
僕は泣きながら部屋を飛び出した。
飛び出した先には隣人が立っていて「うるせーぞお前アパートが倒壊するだろ」と睨まれた。
まったくなんでこんなめに!!