私の主張
「…で?」
突然鳴り響くどす黒いオーラの声。
僕はとびあがることすら出来ずに石化した。
よく見ると鈴木も固まっている。夢ちゃんだけが何故か…本当に何故か部長をうっとりと見つめていた。
たった一文字の台詞なのに、その効果は絶大だった。
しかし何かボイスチェンジでもしているのか機械の様な声になっている。
それなのにこの恐ろしさ。なんなんだこいつは!
(ていうか…)
と、僕は考える。
お面といい声といい、部長はそこまでして自分の正体を隠し通したいんだろうか?
僕は自分の小さな懐にどうしてそんな勇気があったのかわからないが、じいっと部長を見つめた。
部長は足をぶらぶらとさせ、相変わらず窓枠に座っている。
「…で?」
部長はもう一度聞く。
僕は口をぱくぱくと開け閉めする。
で?…と言われてもで?というかむしろ僕がで?という感じで要するによくわからないのである。
「…何処まで説明した?鈴木」
僕は「で?」の相手が僕ではなかったことにほっとして、ばっと鈴木を振り返った。
その鈴木は相変わらず蒼白な顔をしていて、細さが際立ちすぎて揖保の糸のようになっていた。
「…主なルールは大体。言ってあります。」
「フーン。夢」
「はいっ」
うっとりと部長を見つめていた夢ちゃんは慌ててとびあがった。頬を少し上気させている。
「まだ、大丈夫?」
「はいっオールオッケーですっ」
「じゃあ指示するまでそのままで。…お前」
…
えっ僕?!
「だからお前だよお前」
部長は僕に向き直る。
僕は既にこのサークルに入ったことを後悔していた。
まだ活動すら行われていないのに…。
というか鈴木の話とえらく違うぞ!
あんな目をきらきらさせて僕に語りかけていたというのに…今の鈴木はあんかけにされた魚のフライよりも生気のない目をしていた。
かくいう僕もおそらく同じ様な顔をしているだろう。
「…ひあい」
僕は奇っ怪な返事を喉から絞り出す。
「お前は何処までわかってんの?」
「…おにっ」
恐怖のあまり言葉の続きが出てこない。
本当になんなんだこいつは!
「は?」
部長はいらついた声を出した。
僕はその瞬間気絶した。