アオゾラ
Episode.1
「(ホント、いやんなっちゃうよなぁ。)」
雨は嫌いだ。雨が降ると洗濯物が乾かなくて臭うだろ、それに心なしか床がベタベタするんだ。主婦じみた理由に聞こえるかもしれないが、それは間接的に俺の生活に響いてくる。
つまり、雨の中の部活で汚れたまま帰るから、家が汚れる(と言われる)。散々汚れたものを一気に出すから、パートから帰った母さんのご機嫌が急降下するんだ。
ばかばかしいように思えるが、これはかなり切実だったりする。ただでさえ中3にもなると、受験だなんだって口うるさくもなってくるんだ。
胸が痛い―。
「ん?どうしたの、またおばさんに怒られたの、」
「(むっ)別に・・・。」
こいつのこの眉を下げた笑い方が最近どうも癪に触る。
俺と祥吾は小2からの付き合いで、昔から何をやるにも一緒だった。小2で転入してきた祥吾をこいつの美人のおばさんに頼まれて、俺が面倒をみてやっていた。
まぁ、昔は俺も幼かったから、基本的に俺がやりたいことに祥吾を引っ張りまわしていただけだが。
自分でいうのもなんだが、それなりに人当たりのいい俺はクラスでも部活でも無難に「人気者」というボディションにいるのだと思う。
反対に祥吾は、暗いわけではないが、物静かで自分からはあまり話さない。だから、周りのやつらには俺が祥吾の面倒を見てやっているように見えるらしい。
昔は俺もそう言われたりしてその気になっていた。しかし、最近たまに素直に頷こうとすると、こう鳩尾がぐぅっと押されたように感じる。