ひとつの恋のカタチ
苦笑しながら、高島が言った。そんな高島に、美沙も笑う。
「ううん。すごいね。私より読んでる」
「いえ、そんな……」
自分たちの会話がおかしく思えて、二人は互いに笑った。
「あの……ありがとう。手紙、嬉しかった」
美沙が、素直にそう言った。今なら、素直な自分になれると思った。
「あ、あの。いえ! すみません。あの……」
真っ赤になりながら、慌てて高島が首を振る。
すべての不安を拭うように、高島の真剣で暖かい気持ちが、美沙の心を溶かしてゆく。
「私、今年は受験生だし、まだ高島君のこと、全然知らないけど……私でよかったら、つき合ってください」
人気のない静かな図書室で、美沙が静かにそう言った。
何も知らない相手だが、高島は自分を見つめていてくれた。そう思うと、嬉しくてたまらない。きっとつき合えると思った。
美沙の告白は、ごく自然な流れであった。
「え、本当ですか!」
静寂を破って、高島が言う。
「……うん」
そんな美沙の言葉に、高島が満面の笑みで笑った。
「嬉しいです! あの……ありがとうございます。ぜひ、お願いします!」
すごい勢いで、高島が手を差し出して言う。
美沙も頷いて、その手を取って握手を交わした。恥ずかしいような、くすぐったい気持ちがした。
図書室に、静かな時間が流れる。二人は恋人同士になった。
幼いけれど、毎日が一生懸命に過ぎる思春期。無色透明の、ひとつの恋のカタチ。