ひとつの恋のカタチ
「俺、あの時……おまえから告白されて嬉しかった。だけど告白される前から、みんな告白のこと知ってて、からかわれてて……笑うことしか出来なかった。あれからおまえ、学校来なくて、結局謝ることも出来なくて……本当にごめん! バイトに来づらいなら、俺が辞めるから……本当に、ごめんなさい!」
田村の誠心誠意の言葉だと思った。
真里は田村の言葉を聞きながら、いろいろなことを思い出していた。苛められたり、からかわれてきた辛い過去は消えない。しかし、過去は過去なのだと思う。
頑張ると言って、自分の道を見つけようとしている石川。自分に好意を持ってくれた中山。そして、学校で援護してくれたクラスメイト。真里はもう、一人ではないのだと悟った。
「……もういいよ。あの時の想いが田村に伝わってたならいい。だけど私、もう田村のこと、何とも思ってないから。もう一人じゃないから……だからこれからは、ただのバイト仲間ってことで、よろしく!」
中学時代の明るい真里に戻ったかのように、真里は笑って田村にそう言った。もう完全に、田村のことなど吹っ切れたように感じた。
次の日も、またその次も日も、真里は学校へと向かっていく。周りには、支えてくれる中山も、元気をくれる友達もいる。もう、一人じゃない。
辛い過去を乗り越えた時、何かの成果が見つかる。そして、新たな強い自分に生まれ変わった時……ひとつの恋のカタチ。