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ミムロ コトナリ
ミムロ コトナリ
novelistID. 12426
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インビンシブル<Invincible.#1-2(1)>

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 「やっぱり、敵の目的はアルヴェードだってこと?」
「こう状況をみると、そう思うしかないよね。
なにかあるってことじゃない、この機体」
「じゃあ、なおさら渡せないな」
「そうだね。敵機、距離6000。さぁ、第二ラウンド行くよ」
そう気張って言うリフォだったが、その額には汗がにじんでいた。
それを見たレオは、彼女に労りの言葉を掛けるべきか悩んだが、
結局口にすることを躊躇った。
 事実を言葉にすることで、無用な不安を抱かせるのではと危惧したからだ。
ここは、モチベーションを維持するため、今のテンションを保たなければ。
彼女のためにも自分のためにも、だ。
それが例え、見せかけの空元気でも。

「じいちゃんが安全な所に行くまでは、アルヴェードが壁にならなきゃいけないな」
「そういうこと。大丈夫、アルヴェードの性能とレオの腕ならいけるよ」
そう、いけるさ。
弱気になるなよ。
レオ・キスキンスは、あのラック・キスキンスの子。
獅子の子なのだ。
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-サゴン海峡 ウォルターナー諸島-(グアマ天文台標準時0907)
セイボリック重工 工廠内

 普段はせわしなく社員達が行き交い、喧騒に包まれているはずの
オフィスルームなのだが、今はしんと静まり返っている。
 突如として現れたAR達の襲撃を受け、工廠のスタッフ達は
脱出ゲートウェイが設置されている地下のシェルターへと避難していた。
人っ子一人いないのはそのせいだ。

 その人気のないオフィスルームの上座、課長職の人間が使用する
デスクの付近で、パイロットスーツの上に皮製ジャケットを羽織った男が
苛立った様子で左へ右へと、あっちを行ったりこっちへ行ったりと
落ち着きのない様子で、何かを待ちわびている様子だった。
 男は暇を持て余しているのか、そこらの書類をパラパラとめくったり、
オフィスチェアに座ったかと思うと、椅子を回し始めてワーイなどと言って
小遊びしたり、しまいには額縁に飾ってある絵画に油性ペンで落書きをし始めた。
まるで、聞き分けのない悪戯が過ぎる幼児のような振る舞いだ。
 オフィスには、その男の幼稚な行いを傍らで見ていた、
もう一人の男性の姿があった。
彼は、男の行動にさりとて興味がないのか、介入できない理由があるのか、
石像のようにピタリと固まって直立不動のまま、一つ所にたたずんでいた。

 悪戯遊びに興じていた男は、ぱたりと手悪さをやめ、
もう我慢の限界だと言わんばかりに口を開いた。
「まぁーったく、嘆かわしいッ!テュクス君、これは一体どういうことだね?
”贋作”は一体どこへ行ってしまったのだ!」
「はっ、先ほどの戦闘で隊長殿が勢い余って
地上に叩き落してしまったと存じております」
 傍目から男の様子を見ていた男性---テュクスは、上官である男の問いに答えた。
男はテュクスの返答に、深くうなずいて、
「んー。そうねー、落としてしまったねー。
…って、んなこたぁー、判っているのだよぉーッ!」
なぜか突然、激昂しだした。
男はいきりたった様子で更に後を続ける。
「君はあれか、人の揚げ足をいちいち取ってバカにして、
優越感に浸る類の人間かー!?
そんな魔女狩り見たいなマネをして、器量の狭い奴だよ全く。
親の顔が見てみたいねッ!ああー、全く嘆かわしい。
それが、栄えあるニバス紳士のやることだとは全く…。
国の為に戦い、散っていった英霊たちもさぞお嘆きになるぞ。
よし、現存する第一世代である私が特別に講釈してさしあげよう。
よろしいかね、ニバス魂と言うのは古来より…」
「話が脱線しております、隊長殿。
続きを述べさせてもらってもよろしいでしょうか」
熱を帯び始め出した男の話を、容赦なく遮るテュクス。
「おお、すまない。少々エキサイトしてしまったようだ。
構わん、続けたまえ」
「ロベスクとガザの両名が”贋作”の捜索をしておりましたが、
0905時を最後に定時連絡が途絶えました。
”ネッタメント”から転送されてきた交戦記録では、
目標と接触した結果、撃墜されたようです」
「ふぅ、それを先に言いたまえ。過程を述べるのに無駄な時間を
費やすよりも結果をまず簡潔に、先に述べろと幼年学校で教わったろう」
いや、簡潔に言ったと思うのだが。なんにしても理不尽な物言いである。
男の説教はまだまだ終わらない。
「人生の足しになるような教養あふれる話なら、
耳を傾けようと謙虚にもなるが、君の話は無駄が多いし事務的だし、
なにより…ツマラーンッ!!いいかね?小話というのは、起承転結だ。
事のはじまりを語り、その過程をのべた上で、結末にオチをつけるのが
定石というものだろう。ニバス紳士たるもの、ウィットに富んだ
ジョークの一つも飛ばせんでどうする。
そんなでは、社交場でご婦人の一人も口説けんぞ。
よし、いい機会だ。
社交界でマダム・キラーと呼ばれ畏れられた私が、
パーティージョークのイロハについて教授して煎じよう。
まずはだな…」
「隊長殿」
「うん?」
「恐縮ですが話が脱線しております。ジョークの講義なら
またの機会にして頂けますでしょうか」
全く、脱線しすぎにもほどがある。
 大概、上司の話しともあれば、相手の立場と面子を察して、
仕方なく話に聞くに甘んじるところだが、テュクスはそんな礼を
尽くすこともなく慇懃無礼にきっぱりと意見してみせた。
「おお、すまない。ついつい、気を抜くと饒舌になってしまうな。
続きを頼む」
そんな、部下の不躾を気にもせず、咎めることもなく、
さらりと受け止めるこの男もなかなかどうして大した器量の持ち主である。
人格にかなり問題はあるが…。

「いえ、以上です。”贋作”の追撃はいかが致しますか」
「もちろん、続ける。…ん、いや、そうだ…そう、そうなのだよ。
だから嘆かわしいと言うのだ、練達された我が隊の兵が
こんな辺境の田舎侍にやられたなどと」
「向こうが田舎侍なら、我々は芋侍ですね」
 一瞬の間。
空気の流れが、ぴたりと止まった。
 テュクスの今の一言を聞いて、男は関心したかのように
”おぉ”とした破顔した。
「ほほぅ、うまいことを言うな。いやぁ、テュクス君、実に感心だ!
朴念仁な君もワビサビ(?)というものがわかってきたようだね、
喜ばしい限りだよ。うん、うん。
…って、バッカものー!
聞く人が聞いたら、問題発言(?)だぞ、今のは!
確実に、マスコミにバッシングされて、謝罪会見をやらされた挙句、
辞任に追い込まれちまうぞー!
失言でいちいち辞職しちまう、どっかの島国の閣僚と首相かキミはー!」
 男は、またもや『スイッチ』が入ってエキサイトしてしまったようで、
地団駄を踏み、声を荒げた。
しかし、どこら辺が問題発言なのか良くわからない。
この男の発言の方が、よっぽど魔女狩りじみていると思うのは気のせいだろうか。
「それよりも、隊長殿」
「うん?」
「”贋作”の件ですが」
「おお、忘れていた」
忘れていたらしい。
 男は、んんと咳払いをしてから言った。
「外にいる、ガーナの隊にやらせろ。