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恋の掟は春の空

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叔父はやっぱり叔父だった



「ごめんねぇ 劉ちゃん 言い方が悪かったのよねぇ」
おかーさんに何度も謝られていた。
「いえ、なんか、馬鹿みたいに勘違いしちゃって・・すいません」
お店の暖房が、やたらに暑く感じた。

「ほら、劉ちゃんの東京の叔父さんに聞いてもらえないかしら。叔父さんの会社って不動産の会社なんでしょ。他に空いてる部屋がないかどうか、それで、もし空いてたら、そこに直美も住まわせようかって 思ってね。ほら、それだとすごく安心なのよ、私」
最初から、おかーさんも、そういうふうに言ってくれればいいのにって、少し思っていた。
「えっと、 聞いてみます。今日にでも帰ったらすぐに。で、夜に電話でいいですか。おかーさんにかければいいでしょうか」
ちょっと、少しだけ落ちついてきていた。
「ごめんなさいねー。なんかわがまま言っちゃって。電話は直美にでもいいから。もしも 空いてなかったら、近くでもいいんだけど、できれば同じマンションのほうが安心なのよねー」
「はい。聞いておきます」
直美は、笑顔で会話を聞きながら、満足そうな顔をしていた。

「でね、お家賃も聞いておいてね、劉ちゃんの部屋はおいくらなのかしら」
全然知らなかった。
「いやー、ごめんんなさい。おかーさん、それ知りません。ごめんなさい」
恥ずかしかった。
「いいのいいの、ちょっとぐらい高くても、そこにお願いするから、ごめんなさいね、変な事聞いちゃって」
「いえ、それも ちゃんと聞いておきますから。電話します。夜に」
「ごめんなさいね、面倒な事を劉ちゃん。お話は終わりね。さ、ゆっくりコーヒーでも飲みましょ」
おかーさんは、やっと、コーヒーを飲み始めていた。
それから、10分ぐらい、話をして店をでることになった。
おかーさんが 会計をしていると、直美に腕を捕まれて小声でささやかれた。
「ねー、部屋なかったら、一緒に住んじゃってもいいよー。一緒に住みたかったんでしょ、劉」
小声の後に、また小声で笑われた。
「わー痛ぁーい」
お返しに彼女の腕をつまんでやった。


それから、彼女とおかーさんと別れて家に着いたのはお昼をちょっと回った時間だった。
さっそく、住所録を引っ張り出して、叔父の会社に電話をかけることにした。叔父は社長をしていた。
受付の女性がでて、甥っ子なんですがって言って叔父に電話をまわしてもらった。
「なんだー、なんか急用かぁー 」
あいかわらず、でっかい声だった。
「あのー。叔父さんに借りるマンションなんですけど、他に部屋空いてないですか。友達も部屋探してるんですけど」
少しだけ嘘をついた。っていうか内緒にした。
「あー あそこなー ちょっと待ってろ。うちの会社で管理もしてるから調べるわぁ。このままでいいぞ、すぐだから」
少しだけ、電話の保留音楽を聴いていると、また大きな叔父の声が飛び込んできた。
「劉ちゃん、賃貸の募集はでてないなー。売りは出てるんだけどなぁー、1部屋。1部屋なら買っちゃうか?」
「いやー 買わないですよ、大学に通うだけですから」
買うわけないだろうが、普通はって思っていた。
「いや、ほら、今年入学する4大生か、その友達は?」
「そうですけど」
「女か?」
言葉につまった。
「あらー、女だなぁー 劉ちゃんの彼女かぁ」
「関係あるんですか、それ」
ちょっと、一方的にまくし立てられたので、ぶっきらぼうになっていた。

「よし!じゃぁ お祝いで買っちゃう、俺。で、貸すわ、その劉ちゃんの彼女に、それでいいだろ」
とんでもない事を言う叔父だった。
「それって、いいんですか、お祝いってなんですか」
「いやー、お祝いだろうが、どうせなら、もっとでっかいマンション貸すから、一緒に住んじゃえ。どうだ、そっちにするか」
叔父の性格を知っていたけど、呆れていた。
「いや、そこでいいですから」
「そうかぁあー、いいのかぁあ、じゃ今から買っちゃうから、部屋は303号室ね。もう明日引っ越してもいいようにしとくわ。じゃ、これから出かけるから、それで、いいな」
今にも電話を切りそうだった。
「あ、ちょっと、あのー 家賃はいくらになるんでしょう」
「細かいねー うーん4万でどうよ、劉の将来のお嫁さんにお祝いだから、いいや、それで。半額ね」
言いながら、すごい笑い声が受話器に響いた。
「いいんですか、それで」
「あー 劉ちゃんの彼女じゃ、お金もいらないけど、ま、それも困るだろうから、それでいいぞぉ。親父さんには内緒にしてあげるわ。細かい事は後でFAXでも流させるから。じゃ。本当に出かけるからな、またな」
言い終わると電話はすぐに切れていた。

しばらくすると、部屋の間取りと金額が書かれた書類がFAXでやってきた。
まったく、相変わらずの叔父で、笑うしかなかった。

作品名:恋の掟は春の空 作家名:森脇劉生