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信じてなんてきみがいうから僕はたまらなく悲しくなる

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それでも沙羅と出会えてよかった。一年間、沙羅は俺の世話をよくしてくれた。でも俺はもう、まともに彼女の顔を見ることも出来なかったけれど。
さっき落ちた陽が昇ったら、俺は両親の手によって天に送り返されるという。三年ぶりくらいに会話した父さんが言っていたんだから間違いない。一瞬で死ねる方法にしてくれといったら、父さんは頷いた。

明日死ぬんだって実感が湧けば湧くほど、俺の身体を包む冷たい風の感覚が顕著になる。寒い。俺は寒いまま一人ぼっちのまま死ぬんだろうか。
部屋の端っこの薄い寝具にくるまって、ほうっとため息まじりに吐き出す。

足音が聞こえた。夜の見回りの時間か、ってことは夜明けまでもう時間がない。俺はもう一度だけ両手で顔を覆った。一年間一度も流さなかったからか、涙は出てこなかった。
重い鍵をあける音がして、扉が開く。ちゃんと居るよ。笑って顔を上げた。

「…」

相手もまた、笑ってた。泣き笑いの顔で笑ってた。俺はどれくらい間抜けな顔をしているんだろう、考えたくもないけれど。そこに居たのは見飽きた法衣の信者兵じゃなかった。雨が降っていたからだろう、びしょぬれのフードをかなぐり捨てた侵入者は、一歩俺に近寄って、今度は確かに俺の名前を唇に乗せる。

俺は思わず瞬きをした。幻覚を見たんじゃないかと目を擦っても消えなかったそこには、少しばかり伸びた黒の髪の、背の高いひとが立っていた。