VARIANTAS ACT 16 心のありか
「俺にもな…、好きな女が居るんだ。くだらねぇ事でよくケンカするし、蹴られたりもする。そいつはいつも強くてな、何があっても鼻で笑って蹴っ飛ばせる度胸と技量がある、最高のパートナーでもあった…。でもな、そいつはいつも違う男を見てる。だから、俺がその女を抱くには、ちゃんとした訳って奴が要る。間男でいるのはゴメンだ…。だから俺は…」
突然、ジーナがエイトを突き放した。
「ごめん、もう…、帰る」
「ジーナ?」
「…もう、いいから…。大丈夫、酔いも醒めたし。…ごめんね」
彼女はそう言うと急いで立ち上がり、玄関に向かい、ドアノブに手をかけた。
「バイバイ」
ジーナが出ていくのを、エイトは無言で見届ける。ただ、かける言葉が見つからなかった。
「謝るなよ…」
エイトは、部屋の真ん中でそう呟いた。
この30分後、彼女は消息を絶った。後に言う、“憲治争乱”の始まりである。
作品名:VARIANTAS ACT 16 心のありか 作家名:機動電介